2024年06月12日

最後の講義 1000年後のロボットと人間 : 石黒浩

『最後の講義 1000年後のロボットと人間』 石黒浩

 先日のエントリに書いた『僕がロボットをつくる理由』から続けて読んだのだけど、何かもう「納得したくない」という気持ちを強める為に意地になって読んだ感じ。

 石黒氏のロボット研究の根本には『人間とは何か』という問いがあるのだそうだ。そして、この二冊の本を読んだ限りでは『人間とは何か』を問いつつロボット研究の前線に立つ氏の頭の中では「存在としてロボットの方が優位」という位置づけが確定しているように見える。だから『人間がこの世に生まれたことの意味を考えると、人間はロボットになろうとしているような気がしてしょうがない』〜「生き残る」ということを考えた場合、それが理に適っている、という未来へのビジョンが語られる。

 でも、「生き残る」って、自然界で生きる生物として「生き残る」ってことなのか? 人間社会の中で「生き残る」ってことなのか?

 長いスパンで考えたとき、地球規模、宇宙規模の気候変動、環境変化に対して、生身(有機物)の身体は無力云々ということも語っておられるけれども、私たちがまず直面しないといけない問題は、「超温暖化した地球や放射線が降り注ぐ環境の中を機械化した身体で生き残る」ということではなくて、「社会的強者の設定したルールに適応するために、自分の存在を機械化しなければ生活する上で大きな不利益を被ることになる」(今でも、スマホ扱えないと色んな場面で不便な目にあうみたいに)という人間社会での「生き残り」の問題の方だろう。

 石黒氏は後者のような「生き残り」問題も、『道具を使う、技術を使う動物』である人間が進化した先の帰結として是とされているようだ。

 何かそれって便利を求めて進歩してきた「人間らしさ」の成れの果てなのかもしれないけど、「人間らしさ」って一方向ってわけじゃないだろう。違う方向性も探れる余地がこの世に残ればいいな。

 技術の革新は人間の選択肢を増やすというが、自分の望む選択をするには色んな意味で「強く」なければいけないんだろう。「生き残らない」という選択肢も残されているとは思うけど、「生き残らない」選択をするってことがどういうことかよくわかってはいないので、口にしないことにする。


 で、ここから先はただ「納得したくない」が為の難癖なんだけども、

 人間と親和的に関わるロボット、人間らしく振る舞うロボットを研究する中で、アンドロイドが出演する演劇を上演し高い評価を受けたとのことだが・・・

『人間の役者よりもアンドロイドの方が人間らしい心を感じるという人が多かったりするんです。』

 これって、ストレートプレイ苦手な私が歌舞伎は好きっていうのと同じことなんじゃないか? 演出をした平田オリザ氏の『役者に心は必要ない、俺の言った通りに動けば完璧に感動的な演劇になるんだ』という言葉通り、アンドロイドは「型」(ある特定の効果を生み出すために高度にプログラミングされた動き、手順、人や物の配置)の芝居をしたのではないだろうか?

 だとしたらきっと舞台で演じるアンドロイドが発したのは生な感情や人間性ではなくて圧縮された「記号」だ。「記号」を受け取った側は思う存分その記号の内に圧縮された意味を膨らませ、自分の心や想いを投影することができる。観ている人はその「記号」から呼び起こされた自分のイメージや心の動きを演者に投影して「人間らしい」と感じているのだ。

 それってつまり、「人間らしい心」は演者の側でなく観ている人の側にあるっていうこと。「アンドロイドの方が人間らしい」というのは言葉足らずで、自分が思い描いたイメージを投影する器として(その舞台では)生身の役者よりアンドロイドの方が適していた・・・という、そういうことなんじゃないか?

 その他にも人間に対するより対アンドロイドの方が良好な関係性の現れが見受けられる例が紹介されているけれど、それも、対人間よりも対アンドロイドの方が『社会的なハードルが低い』から自分だけに都合にいい関係を持てるということなんではないの? 現時点では。

 短期的にはこのアンドロイドとの疑似的なコミュニケーションが人の存在に良い影響を持つとしても、長期間にわたってこのような環境に身を置いた場合の実験はまだなされていないとのこと。

 もし未来において、アンドロドが人間と同じような精神活動をするようになったら、普通にアンドロイドとの対人ストレスに悩まされるようになるんだろうか? それとも、自分の心に適うものだけを相手にして、社会を形づくらなくても生き延びていけるものに人間は進化していくのだろうか?


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2024年05月31日

僕がロボットをつくる理由 : 石黒浩

『僕がロボットをつくる理由』 石黒浩

 タイトル通り、あくまでも『僕が』ロボットを作る理由や目指すところ、ロボット研究を通して考える「人間の生き方」「人間とは何か」のお話しだと思う・・・ことにしようと思う。

 語られていることは、ロボット研究の前線で働く研修者の視点から見た事実や現実であろうとは思うし、技術の発展によってもたらされる事象の負の側面には触れず、広がる未来の可能性を真っ直ぐに語る著者のロボット研究は、技術をより良い(社会にとって有益な)方向に使ってこそ人間だというような人間性への信頼(信念?)がベースにあるのかなと感じる。

 それでも、「納得したくない」と思ってる私がいる。

 お話しの中に「機能美」や「効率」を志向する言葉がよく出てくる。社会の中で機能的、効率的であること、有用であることはプラスの価値を持つことだろう。でも、
より良いロボットをつくっていくには、価値のあるロボットと価値のないロボットを分ける必要があります。そこでロボットに承認欲求を持たせておくと、一生懸命がんばるでしょう?

ロボットにも「いいねボタン」があればいいですね。

 これには傷ついた。

 
 科学技術によって人間の能力を拡張する。この流れはこの先どんどん加速していくのかもしれない。

 でも、「ひたすら拡張していったいどこへ行くのだ?」という気持ちを私はどうすればいいのだろう。

超長期天気予報によれば我が一億年後の誕生日 曇り
                    穂村 弘


 『世界中が夕焼け』で、この一首について、
天気予報って人間が頑張って、神のサイコロ遊びみたいな天気を当てようとしているんだけど、なかなか当たらない。まして超長期天気予報なんていうのは当たりっこない。だけど、人間はその方向に頑張るしかないみたいなところがあって、かつ、一億年後は生きてないわけです。でも、〜

「曇り」とは『神さまに対する人間の尊厳の申し立て。』『人間はやっぱり曇りなんだと思う、存在として。』と言った歌人・穂村弘氏の言葉が、この本を読む間ずっと頭に響いていた。


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2024年05月21日

鷹之資さんが矢三郎ですと!

 なんと、鷹之資さんが舞台『有頂天家族』にご出演!

 原作小説、森見登美彦氏の『有頂天家族』は大好きな作品。

 そして下鴨四兄弟の三男坊、『高杉晋作ばりのオモシロ主義者』矢三郎を鷹之資さんが演じられるとは! あはぁ・・・鷹之資さんの毛玉姿、拝見したい。

 11月南座 行きたい、行こうかな、行けるかな? 
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2024年05月19日

新潟に行きます

 来月、『ゴールデンカムイ展』最終開催地 新潟に行きます! 

 今年の正月明けに友人から『ゴールデンカムイ』を薦められて、あっという間に激ハマり。その流れで人生初「応援上映」なるものを経験し、さらには、ことあるごとに「新潟行き」をささやかれてはいたものの、『いや、新潟は行かんでしょ。普通に。』と思ってた。

 でもね、何でこうなったかよくわかんないんだけど、気がついたら新潟行くことにしてました。人生初新潟。飛行機苦手なもんで、陸路約15時間かけて行ってきます。空路で行く友人とは現地で合流。カムイ展と温泉と新潟の酒と「いごねり」を楽しんでくる予定。

 何でこうなったのかわからなすぎて浮足立ってる。とまどいなのか高揚感なのか、気持ちがふわふわしちゃって、何だかよくわかんないんだけど、↓こういうものや、こういうものを入手すべくあちこち走り回っている。   

georgia.jpg 月寒あんぱん.jpg
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2024年05月13日

歌舞伎座の怪紳士 : 近藤史恵

『歌舞伎座の怪紳士』 近藤史恵

 職場での理不尽な体験がもとで心に不調をかかえる久澄。母と姉の手助けを受けながら自宅で家事手伝い生活をしている久澄のもとに、「あまり外出できなくなった祖母の代わりにお芝居を観て感想を書く」という観劇代行のアルバイトの話が舞い込む。

 最初に送られてきたのは歌舞伎のチケット。演目は『摂州合邦辻』『身替座禅』『京鹿子娘道成寺』。

 久澄の目の前に広がる劇場の風景。ロビーを行きかう観客の姿。舞台の輝き。お芝居の魔力。観たことのない演目は、久澄と一緒にドキドキと高揚感をもって見つめ、何度か観たことのある演目も、歌舞伎を初めて観る久澄の目を通して改めて新鮮な感興と煌めきをもって味わうことができる。

 そして・・・送られてきたチケットで久澄が観劇をする度になぜか劇場で出会う紳士。この不思議な紳士と言葉を交わし、劇場で起こるいくつかの事件を共に解決していくことで、こわばっていた久澄の心が少しずつ耕され、開かれていく。


 『好きなものがあることが明日への活力です。』
 『本当にそう!』


 ほんのりミステリー風味を楽しめ、日常を普通に生きていくことの難しさに怯んでしまいがちな心に寄り添ってくれる、そして何よりお芝居好きには共感必至の小説。

 でも・・・久澄が心の柔らかさを取り戻していくさまを100%の共感で応援できたかというと、そういう訳ではなく・・・。久澄が置かれた状況を思えば仕方のないことだとは感じながらも、自分の心を守ることが最優先で、他人には他人の痛みがあるという当たり前のことに思い至るまでに少し時間がかかってしまう久澄を見ていて苦々しいというか、ちょっと苦しい気持ちにはなった。


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2024年04月26日

名もなき本棚 : 三崎亜記

『名もなき本棚』 三崎亜記

 朝から感じていた異物感にたまらず咳き込むと喉から金属製の部品らしきものが転がり出て・・・『部品』。政府によって確認された「未確認」改め「確認済飛行物体」がしょっちゅう姿を現す街で・・・『確認済飛行物体』。ダブって登録されてしまった個人情報・・・そのどちらが本当の「私」のものなのか・・・『私』。


 本を読むための体力と集中力が衰えていく一方だ。好きな作家の作品であっても、ずっと読みたいと思っていた本であっても、一日にほんの数ページしか進まない。

 そこへいくと、これは短いものだと一篇4ページほどの掌編集。これなら今の私でも集中を切らさずに作者の語る奇妙な世界にスッと入っていけるのではないかと思ったのだが・・・ これはこれで、ほんの数ページの間に世界に没入するための、瞬発的な集中力が足らないと思い知らされる。

 それでも、上手い具合に集中が来て作品の世界に入り込めた時には、ページから目を上げた瞬間に「ヴ、、ヴゥンッ」とノイズが走る音をさせて目の前の日常の映像が一瞬ブレるような・・・そんな感覚を味わうことができる。  


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2024年04月19日

好きになってしまいました : 三浦しをん

『好きになってしまいました』 三浦しをん

 しをんさんのエッセイからは、グツグツと滾り迸るアツすぎる思いや、いかんともしがたいトホホな暮らしぶりが溢れ出していて、いつも「ブフゥッ」と吹き出したり、「うんうん」を通りこして「ガクガク」とうなずいたり、荒々しすぎる鼻息にちょっと引いてしまったり・・・。ともすると胸やけするほどの情熱を感じていたものだが、おや、今回は随分書きぶりが大人し目である。

 企業の会報誌に連載されていたものが中心なので、それぞれの企業のイメージを慮ってあまりの大暴れは控えた、ということなのかもしれないけれど、それよりもこの穏やかさの元にあるのは・・・「加齢」?

 愛する植物や書物やアーティストやキラキラしたものの話。好奇心を開放し、極上のリラックスを味わい、美味を堪能する旅の話。時々発動する妄想。やっぱりトホホな日常・・・そういったものをサービス精神たっぷりに盛り合わせながら、読者が胃もたれしない程よい軽さに仕上がっているのは、ご自身も胃もたれを知るおトシにさしかかってこられたからではないか・・・とか、思ったのですけど。


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2024年04月06日

木島日記 うつろ舟 : 大塚英志

『木島日記 うつろ舟』 大塚英志

 「あれ? 『木島日記』の新しいのが出てる? 今?」と思って手に取った。

 もう20年以上前になるか・・・『多重人格探偵サイコ』とか『木島日記』とか…大塚英志の小説を好んで読んでた時期がある。ハマっていたと言えばハマっていたのだが、当時すでにけっこういいトシだったので、物語に共感し同調するというよりも、失ってしまった慕わしく、懐かしく、憧れてやまぬものを硝子越しに眺めている・・・そんな感じではなかっただろうか? 今となっては、当時の感覚を思い出すのも難しい。

 やはり20年近く前にこのブログに「坂道と古本屋」について書いたことがあるのだけど、この物語に登場する仮面の仕分屋・木島平八郎が営む古本屋・八坂堂は、中禅寺秋彦の京極堂と並んで私の中での二大「坂の上の古本屋」である。これに三浦しをん『月魚』の無窮堂をあわせて私の中の三大「訪れる者を惑わせる古本屋」なのだけど、古本屋にもそれを扱った文芸にも詳しいわけではない私がこういうことを言うのは恥ずかしいことかもしれない。てへ。

 
 民俗学者・折口信夫博士の周辺に湧く「あってはならないもの」。暗躍する軍や諜報機関の怪人たちによるその「仕分け」の物語。

 『かつてあの時代、こういう小説もあったな、という読者諸氏の一つの追憶の材料にでもなればと刊行する次第である。』〜「あとがき」より

 まさに、そういう読み方をさせていただいた。私はまた、大塚英志氏の掌の上で転がされてしまったわけだ。


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2024年03月27日

スナイパー入門 銃の取り扱いから狩猟まで : かのよしのり

『スナイパー入門』 かのよしのり

 実写化きっかけで友人から『ゴールデンカムイ』を薦められて激ハマり。中でも孤高の狙撃手・尾形百之助に感情グチャグチャに掻き乱された挙句、そのグチャグチャな感情の持って行き場がなくて輾転とした末に、たまたま立ち寄った古本屋の店先で見かけて自分が何を思っているのかよくわからないままに購入してしまったもの。

 そもそもそんなよく訳のわかんない経緯で手に入れた本だったし、私自身はスナイパーにもハンターにも競技者にもなりたい気持ちは全くないのだけれども、意外にも面白く読んだ。

 鹿などの大物猟に憧れる良太郎青年が、元自衛隊員でベテランハンターのおじさんの指導の下、ハンティングデビューするまでのストーリー仕立てで、実際に狩猟に出るまでに必要な一通りの事柄を解説してくれる。

 銃を所持するための許可の取り方、銃の種類や特性、射撃場での練習、狩猟免許の取得や狩猟者登録について。次いで銃の取り扱いや狩りに出る場合の服装、装備、行動の仕方。獲物となる動物の種類やその生態に仕留め方、解体の方法に美味しくいただく調理法まで。ざっとではあるが一通りのことを見渡して、「やってみたい。 何か出来そう!」と思わせてくれる実践的な指南書なんではないだろうか。

 実際に獲物を仕留めて解体し食す・・・というあたりの話は、「うんうん、アシリパさんもそう言ってた」なんて思いながら読むことも。

 ところで、『ゴールデンカムイ』作中で尾形が見せるあの座り撃ちの姿勢、この本の中では『第二次大戦ころから狙撃兵に用いられてきた』とあるのだけど、それならもっと早くからこの姿勢を身につけてた尾形はやはり狙撃手としては天才的ということ?


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2024年03月09日

春風伝 : 葉室麟

『春風伝』 葉室麟

 「今年も梅の花の香る季節になったなぁ・・・」と、ふと思った二月の中頃に読み始めたのだけど、思いのほか頁が進まず、読み終えるのに随分暇がかかってしまった。

 高杉晋作モノはなかなか評伝を超える作品に出合うのが難しい。

 「春風伝」・・・春を呼ぶ風。まさに春雷のような晋作の姿に胸わななかせたい・・・と期待を込めて読み始めたけど、この小説に描かれた晋作は割と早くから人格的にも思想的にも完成された、言動の一貫した綻びのない人物に見えて、何だか少し魅力に欠けた。歴史の中で、晋作が動いたことで結果的に成されたこと・・・その結果に美しく結びつけるべく作中の高杉晋作という人物が作られたような・・・。

 上海滞在中の晋作の体験が物語的に大きく膨らまして描かれているけれども、それでも評伝を読んで感じる以上の劇的なものをこの小説に感じることができなかった。

 この小説の参考文献としても挙がっている海原徹氏による評伝『高杉晋作 動けば雷電のごとく』。これが今まで私が読んだ中で一番ワナワナできる晋作モノなんだが、これを超えるものに何とか出会いたいもの。
 
『高杉晋作 動けば雷電のごとく』感想・・・http://bitter-sweet-pea.seesaa.net/article/388359204.html 


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ラベル:高杉晋作
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2024年02月28日

わはははははは・・・・

 予約購入していた『THE FIRST SLAM DUNK』のBD(LIMITED EDITION)が発売日の今日届いた。

早速、開封。ディスクや封入された特典を一つ一つ取り出してみる手が、色々とこみ上げてくるもので震える。手に取るすべてから制作者の方々の想いが溢れてくる。尊い。

大切に見続けよう。

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2024年02月14日

博多座二月花形歌舞伎 〜 乱歩歌舞伎とお殿様のお戯れ

江戸川乱歩「人間豹」より
【江戸宵闇妖鉤爪】明智小五郎と人間豹
「分かったぞ、貴様明智だろう。明智小五郎だろう」

「ハハハ……、やっと分かったか。お察しの通りだよ。君をこんな目に合わせる人間は僕の外にはありやしないよ。」

江戸川乱歩「人間豹」

 私、原作のこの台詞が大好きなんだけれども。この台詞に表れる二人の関係性〜人間豹・恩田と明智小五郎が互いにとっての唯一無二の存在であるってことが、この舞台では少し形を変えて、恩田を前に明智が口にする「似たもの同士」って言葉に込められていたな。

 紙一重のギリギリのバランスで「善」の側に立つ明智が心の内に隠す、恩田が抱く闇への共感と、人という軛から放たれた禍々しき自由さへの憧れ。単なる名探偵ではない明智小五郎の仄暗い胸の内が後半の見どころでした。

 原作とは違い、恩田の母が物語に絡むのも良い。愛情深くはあるけれども恩田の哀しみを理解しない母の存在が、恩田の闇をいっそう暗くしている。

 染五郎さん演じる人間豹・恩田乱学。恐ろしいけど美しい。美しいけど禍々しく哀しい。素晴らしい悪の華。素晴らしい怪人ぶりでした。

 河合雪之丞さん、怪人の餌食となる美女役としてはもう欠かせない存在か。

 宗之助さんの小林屋新吉、廣太郎さんの目明し恒吉、重苦しい舞台の中でちょっとほっとする存在。

 
 ところで、大詰めのぬいぐるみショーは原作通りにやらなくても良かったんじゃないか?と思ったり・・・(原作はもっとお間抜け展開なので、まんま原作通りというわけではなかったけども)

 ああ、それから、恩田とともに染五郎さんが演じた神谷芳之助の病みつかれた色男ぶりを見て、染五郎さんに箕浦くんを演ってもらって「孤島の鬼」を歌舞伎化してくれないかしらん、と思った。
 

乱歩歌舞伎.JPG


【鵜の殿様】
 美しすぎる殿様、全力のお戯れ。

 パンフレットの解説によると、この舞踊、山川静夫氏が原案を練られたのですねぇ。鵜飼の趣向には、普段は庶民から搾取する側の殿様を皮肉る気持ちも込められているようですが、踊りはあくまでもユーモラスで可愛らしい。

 鵜匠役の太郎冠者の手綱に散々に引き回されながらも全力で踊る殿様がお可愛らしすぎる。時々無重力になる幸四郎さん、染五郎さんの動きに見惚れた。
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2024年02月11日

全部あの狙撃手のせい

友人に薦められて今さらだが『ゴールデンカムイ』に激ハマり。

尾形に色々掻き乱されすぎて、帰省先で立ち寄った古本屋さんでこんなもの買ってしまう程度には情緒がおかしくなってる。

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2024年02月07日

歌右衛門の六十年 ーひとつの昭和歌舞伎史ー : 中村歌右衛門・山川静夫

『歌右衛門の六十年 ーひとつの昭和歌舞伎史ー』 中村歌右衛門・山川静夫

 エンターテインメントの多様化に社会や価値観の急速な変化、そしてコロナ禍。この数年、歌舞伎は大きな変化の波にさらされていると思っていたんだけれども、いやいや、明治維新も戦争も、変わりゆく社会の枠組みも、新しいメディアの誕生も、移り行く人の心も・・・歌舞伎はこれまでもずっと時代の波にあらわれて、変化しつづけながら今まで生き残ってきたのだった。大正末から昭和の歌舞伎界に生きた六世歌右衛門丈と数々の昭和の舞台を観てこられた山川静夫氏の言葉を読みながら、まずは素直にそのことを思う。

 山川氏による丁寧な地の文、熱のこもった問い、歌右衛門丈との間で交わされる言葉の空気感から、昭和の歌舞伎を彩った名優たちの舞台、その中でもひときわ大きく咲き誇り、人々の目に心に焼きついているであろう歌右衛門丈の姿を想う。同時にお二人の会話からは、歌右衛門丈が一面、とても現実的で柔軟な方であった様子もうかがえる。 


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2024年01月23日

復活上映!

本日、『THE FIRST SLAM DUNK』復活上映!

雪模様の中、熱い一日を過ごしてきました。

ソーちゃんの姿を見た途端に涙ツーっとこぼれたのには自分でもびっくりした。

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2024年01月19日

地図と拳 : 小川哲

『地図と拳』 小川哲

 日露戦争前夜から第二次世界大戦後の満州の地 〜 様々な国家・民族の思惑、個人の利害、因縁がからみあう中で栄え、滅びたある都市の年代記。地図を描き、建築物を生み出し、未来を思い描き都市を創る。都市の歴史に様々な形で関わったものたちの長きにわたる人間ドラマが展開するスケールの大きなエンターテインメント。

 ところで、地図を描くという行為について・・・

 それは、未踏の地に踏み出し、世界を計測し、その有り様を知らんとする自由で尊い精神のなせる業なのか、それとも、世界を人の手中に収めんとする度を超えた欲望の末の所業なのか。

 最後に描いた李家鎮の地図に、『地平線の向こうにも世界があることを知らなかったあなたへ』という言葉を記したクラスニコフ神父は、真に『地平線の向こうにも世界があることを知る』人だったのか? その言葉は、果たしてかつての李家鎮の住人たちに向けて書かれた言葉だったのか? むしろそれは、自分自身に向けられた言葉であってほしいと、私は思うのだけれど。


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2024年01月10日

有栖川の朝 : 久世光彦

『有栖川の朝』 久世光彦

 昨年末に読んでいたもの。久世氏の小説を読むのは久しぶり。

 久世氏の書くものは熱っぽく湿って少し悲しく、見すぼらしくて哀れだけれども色っぽい。
 
そこに見えるのが夢という嘘の世界だと思っても、嘘こそが本当なんだよ。

 一時、ワイドショーを騒がせた実在の事件を題材に久世氏が描いた、一日限りの壮麗な『嘘』を目論んだ一人の老女と一組の男女の人間模様。

 妾として長年暮らし年老いた「お月さん」。父親の短慮から「安間安間」という妙な名前になってしまった大部屋俳優の中年男。とんでもない美貌の持ち主だけども何だかぐにゃぐにゃした「華ちゃん」。京都有栖川生まれの安間に「有栖川識仁」を名乗らせ、華ちゃんに華麗な十二単を着せて華やかな結婚披露の宴を開き、何がしかのご祝儀も頂戴しようというお月さんの企み。

 捕った魚をわざわざ平たい石の上に並べて見せびらかし、それで我が身を滅ぼしてしまう川獺のように、愚かな事とは薄っすら自覚しながら、知恵と見得の限りと少しの夢をつぎ込んで『嘘の祭り』の準備をする三人。彼らに注ぐ月の明り、朝の光はただ美しくそこにある。

 お月さんは、安間や華ちゃんは、塗り固めた嘘の中にどんな本当を見ていたのか。


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2023年12月25日

リハビリ開始

5月以降、気持ちが沈むことが多くて、本を読むのも、絵を描くことも、音楽聴くのすら億劫になっていたんだけど(唯一、『SLAM DUNK』だけを動力源に最低限職場には通ってた感じ)、やっと少し気分が上向いて来たので、新しい年に向けてリハビリを開始しました。

まず、本当はもっとハマって楽しみたかった歌舞伎版『刀剣乱舞』鷹之資さんの同田貫。

鷹之資_同田貫.jpg


演舞場で観たかった〜〜〜〜。来春のシネマ歌舞伎楽しみにしてる。
ラベル:歌舞伎
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2023年12月22日

歌右衛門の疎開 : 山川静夫

『歌右衛門の疎開』 山川静夫

 自宅を引越すにあたって手持ちの本を整理するから〜という友人の好意に甘えて譲りうけたもの。もともと古本で入手したものとかで、頁の端は茶色く焼けていて、手に取るだけで、ちょっとノスタルジックな気分が湧いてくる。

 そして頁を捲るごとに見えてくるのは、セピア色の画面に浮かぶ、懐かしく、慕わしき人々の姿。

 戦火を避けて身を寄せた湯田中の旅館で、桜の花びらが舞う中を逝った十五世羽左衛門。辺り一面の火の海の中を命からがら逃げまどい、坊主頭に国防服で疎開先での日々を過ごした歌右衛門。三代目猿之助の劇しい(はげしい)生き様。それぞれの芸の道に身を捧げた名人たち。

 華やかで美しいばかりではない、どうにもならない苦しみもあった過去の時を生きた先達や、同じ時間を過ごした芝居狂の仲間たち 〜 過ぎていく月日や去っていくものたちへの敬意と愛情に溢れた言葉。著者の愛したものたちの姿が、少しの苦みと寂しさを含んだ明るみの中に浮かび上がる。


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2023年12月14日

不忠臣蔵 : 井上ひさし

『不忠臣蔵』 井上ひさし

 世に名高い『忠臣蔵』。華々しく語り継がれる赤穂浪士による吉良邸討入の陰に、一度は義盟に名を連ねながら、自らの意志で、あるいは運命の巡りあわせによって脱盟していった者たちがいた。世に不義士と呼ばれることとなった者たちの真実を語る銘々伝。

 語り手は不義士本人であったり、縁ある人物であったり、ただの市井の一庶民であったり・・・ ひとりがたりに語られる話の中から徐々に不義士とされた者たちの真実が明かされて(暴かれて)いくそのさまを、あるいはミステリーを楽しむように、あるいは秘められた歴史奇談を味わうように、胸をジリジリさせながら読んだのだが、同時にその語りは、忠義を褒めそやされる大石への懐疑や、実に無自覚、無責任に他人様の人生を娯楽として消費する大衆への批判も滲ませる。

 丁寧にも巻末に『不忠臣蔵年表』が附されていることで、美々しく語られることはなかったであろう彼らの生の痕跡が僅かにでも歴史に刻まれたような気がして胸を熱くする。が、そこに記されたちょっと間が抜けてもいる出来事に、何だか泣き笑いの顔になる。


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