2014年07月27日

神様が殺してくれる : 森博嗣

『神様が殺してくれる』 森博嗣

 自らが巻き込まれることになった、美しすぎる友人リオン・シャレットに纏わる連続殺人事件について語る「僕」。その語りに悲しみと欠落を漂わせる「僕」という存在そのものに何か秘密があるのだろうということは最初から予感された。

 リオン・シャレットに関わる5人の男女が次々と殺された理由。殺人の現場にいたリオンが「神が殺した」と言い、その神の名として「僕」の名前を告げた理由。残酷な事実のすべてを語る「僕」と、事実として語られた言葉を「そのまま信じることはできない」と言う「僕」と、結局は言葉にできなかったことと・・・。

 千々に分裂する「僕」の姿も、殺人を犯した「僕」の半身の思いも、「僕」を神と言ったリオンの思いも、そのありのままを掴むことは難しくて、ただそのことを思い、考え続けることしかできない。

 事件によって深く傷つきながらも、自分のために、リオンのために、自分の半身のために、何が起きたかを明らかにするべくこの一連の事件を語る「僕」の言葉は自制と思いやりに満ちて切ない。

深い傷を抱えて「僕」はこれからも生きていく。唐突だけども、「ありのままに生きる」ということはやはり高らかに誇らしげに歌い上げるものじゃなく、あきらめ(諦める+明らめる)を含んで口にするものなんじゃないかなと思った。


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2014年07月23日

幻想怪奇譚の世界 : 紀田順一郎

『幻想怪奇譚の世界』 紀田順一郎

 「これから本格的に暑くなってくるし、何か怖いもの読もう」と思い立ったのだけど、「怖いもの」といっても一体どのあたりに手を付けようか? という思いもあって(数年前の夏にはイギリスのゴシック短編集を読んでみたものの、ちっとも怖さを理解できず大失敗!ということもあったので)、まずはガイド的なものを。

 文庫や全集の解説として書かれたものが多く、第一章は日本の作家、作品について 〜 小泉八雲、泉鏡花、夢野久作らの作品世界や、乱歩、海野十三、小栗虫太郎ら推理小説やSFと幻想怪奇的なものがないまぜになっていた時代の作家たちについての解説、「百物語」という怪異を生む、体験する「場」についての考察など。

 第二章はルイス・キャロル、H.G.ウェルズ、ガストン・ルルー、アルジャノン・ブラックウッド、アーサー・マッケン、サマセット・モーム、H.P.ラヴクラフトら海外の作家が生んだ幻想怪奇の作品空間についての分析 〜 その背景、成り立ち、特質。

 第三章に翻訳もの短篇を三作品収録。フリードリヒ・フーケ「ウンディーネ」、アルジャノン・ブラックウッド「とびら」、ウォルター・デ・ラ・メア「なぞ」。お伽噺のようだったり、SF的だったり、純然たる怪異だったりと味わいは異なるのだけど、やたらとデコデコ飾り立てず、さらりと描き出された怪異と不思議の感触は、岡本綺堂の怪談の肌触りにも似ているなぁと思った(まぁ、翻訳ものだから原文の味わいはまた別かもしれませんが)。

 んで、この夏、「怖いもの」は何を読もうか・・・ですが、本書にはまったく関係なく、上田秋成『雨月物語』にしようかと。(この夏には無理かもだけど、本書で興味を持った海野十三「深夜の市長」もいずれは・・・) 






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2014年07月20日

オクラって

夏野菜をたくさんいただく季節になりました。

オクラを茹でながら思ったんだけど・・・オクラってプラナリアに似てる。
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2014年07月16日

源氏物語読了

 円地文子訳『源氏物語』、読み終えました。

 お堅く内省的でこの上なく高貴な薫大将と無邪気で可愛らしくふわふわと蝶のように華麗な匂宮。対照的な二人のイケメンが物語の末尾を彩りますが、繰り広げられるのはあまり華やかでもない女性をめぐっての下世話なゴシップのようでもあり、光源氏の放っていた強烈な輝きが消えた後の薄暮の中でギシギシと進行していくドラマは、どこか虚無的な空気を漂わす。

 今年の初めから約半年かけて読んできただけに、中空にぽんと放り出されたような終わり方に呆然としました。



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2014年07月11日

朱黒の仁

 Nemuki+コミックスより新装なった槇えびしさんの『朱黒の仁』壱・弐巻が届きました。壱巻はカドカワ版を持っているのですが、新しい連載先で無事完結してほしいという想いも込めて、迷わず新装版も買いました。内容は同じものですがカバー下のオマケ漫画『大助の「父上、万歳」』が新しくなってます。

 早く読みたいのはやまやまなのですが、まずは真田父子、兄弟についてちょっと予備知識を入れとかなきゃと思ってて・・・。真田三代についての本をなにか読もうと思うのだけど、まだ『源氏物語』にかかりっきりで他になかなか手が回らない。

 ところで、幸村と同じく豊臣方についている後藤又兵衛が素敵なのですが、大河ドラマ『軍師官兵衛』での又兵衛役、塚本高史も“いい!”と思いました。あの、気が強くて主に平気で逆らいそうな感じが・・・。






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2014年07月09日

歌舞伎のぐるりノート : 中野翠

『歌舞伎のぐるりノート』 中野翠

 あれはやっぱり『伴奴』・・・だったのかなぁ。学生の頃、歌舞伎座でまだ小さかった勘太郎さん(現勘九郎)が踊るのを観た。三階席からなので舞台はちょっと遠かったけど、小さい勘太郎さんはすでに一人前の役者の自覚を見せて、しっかりと自分の踊りを踊っていて、「この子は近い将来お父さんを超える役者になるのだろうなぁ」とごく自然に思わされた。当時のチケットや筋書は手元に残っていないし、あれが何の踊りだったのか思い出せなくなっていたのだけど、ページに添えられた「幼い日の勘太郎の『伴奴』」のイラストを見て、「あ! この感じは!」と記憶が蘇った。

 著者が見て、感じてきた歌舞伎とその周辺をめぐるコラム集。さらりと書かれたシンプルだけと達者なイラストが効果的に文章を彩り著者の感興を伝えてくれる。

 『歌舞伎的なもの』に『血が騒ぐ』著者の感覚には共感するところが多かった。特に、歌舞伎が味わせてくれる「ある一瞬」について。

 歌舞伎は最初から最後までず〜っと面白くわかりやすいもの・・・というわけではないと思う。ただ、歌舞伎を観ていると時々、その「一瞬」に薙ぎ払われることがあるのだ。それはもう『なにか凄いものを見た』としか言えない一瞬。理屈だとか、人間の理解の速度をはるかにこえた凄まじい情報量が身体を雷のように貫く。著者の言う通り『それは一瞬であっても、何ものにも替えがたい貴重な一瞬』で、その稀にやってくる「一瞬」に撃たれたいがために『おうおうにして退屈』な歌舞伎を観つづけずにはいられないのだ。

 それにしても著者が「歌舞伎的なもの」の化身のように思い、何度も語っておられる六代目歌右衛門さんの舞台を観ていない・・・というのは取り返しのつかないことだ。観ようと思いさえすれば多分不可能ではなかったのに。私のバカバカバカバカ。


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2014年07月05日

本当のことしかいってない : 長嶋有

『本当のことしかいってない』 長嶋有

 書評集・・・なんだけど、何か不思議。読んでいて一番印象に残るのが「長嶋有」なんである。

 長嶋有が気になる作家だからというのはもちろんあるんだけど、それだけじゃない。これまで好きな作家〜中島らもとか、久世光彦とか、三浦しをんとか〜が書いた書評集を何冊か読んでいるけど、それぞれの視点や読みをおもしろく味わった上で最終的に興味が向かうのは、らも氏や久世さんやしをんさんに沢山の言葉を語らしめた「作品」の方だったのだ、大体において。

 だけど、何でだろう? この書評集を読んでいると、取り上げられている作品よりも、色々な本を読んで色々なことを感じている「長嶋有」の方にばかり関心が向かってしまう。あとがきにも『まとめてみたら、通常の書評集とはありようが異なっていた。』『これはどこか小説のようだ。』とあった。

 取り上げられた作品についてとても繊細な読みがなされている。作品や作中人物が「している」ことでなく「していないこと」を読み、「ある」ことよりも「ない」ことに感じ入る。

 川上弘美の『光ってみえるもの、あれは』の各登場人物の間にあるのが「あなどり」であるという指摘にははっとした。私が単に「嫌な感じ」だと思っていたもの〜作中で発せられる言葉の中にあったものの正体は「あなどり」。そう、「あなどり」かぁ・・・。この「あなどり」に気づかなければ、この作品の空気となっている『あなどられる人の余裕』『あなどらせることの優しさ』にも思い至れないわけだなぁ。





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2014年07月01日

『ALL YOU NEED IS KILL』試し読み

 もらってきた『ALL YOU NEED IS KILL』コミカライズ版お試し用冊子を読んだ。

 映画版の予告で見たリタ・ヴラタスキは意志が強く、引き締まった身体の女性兵士という感じだったけど、コミックのリタは華奢で小柄な少女の風貌。戦場にいるにしては無垢なその雰囲気・・・聖女的というか。原作小説のリタも“この感じ”なんだろうか。だとしたら、ちょっと読みたい気持ちが減退するな。 


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2014年06月29日

試し読み

140629_205306.jpg TSUTAYAで『ALL YOU NEED IS KILL』のコミカライズ版試し読み小冊子をもらってきた。

小冊子とはいえ、かなりのボリュームで読みごたえがある。でも、どちらかというと原作小説の方が読みたいんだなあ。

トム・クルーズ主演の映画は…さて、どうしようか。



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2014年06月27日

竹取物語 : 文・江國香織 画・立原位貫

『竹取物語』 文・江國香織 画・立原位貫

 先日、宇月原晴明氏による伝奇的な『竹取物語』、『かがやく月の宮』を読んでいて、改めて本来の『竹取物語』を読みたいと思ったのです。『竹取物語』を読むのにこの本を選んだのは、江國香織さんが、かぐや姫という女性をどのように書くのかということに少し興味があったからなのだけど、あまり余計な色付けはされていませんでした。

 学校の授業を離れて、「物語」として読んでみて印象に残るのは、あくまで「異界の生き物」であるかぐや姫の姿。五人の求婚者たちにはもとより、長年慈しみ養ってくれた竹取の翁とさえ、何ら心に通じ合うものがなさそうな。人と同じ姿はしていても、完全にこの世の理屈とか情といったものの外に在る生き物。

 そんな姫が帝と心を通わすようになったのは何故なんだろうなぁ? 帝、よほど美男でいらしたのだろうか。それとも、深い深い想いにほだされて? う〜ん、やっぱり「帝だから」?

 ようやく人の世のあわれをも解するようになる姫であるが・・・

 ふと天の羽衣うちきせたてまつれば、
 翁を「いとほし、なかし」と思しつることも失せぬ。

 天人はかぐや姫に、すばやく羽衣を着せ掛けます。
 それで、姫のなかにあった翁への感謝も同情も
 消えてしまいました。


 再び、心の通じぬ異界のものとなって去っていくかぐや姫。

 この世の人々の心をあれだけ掻き乱した美しいものが、この世と通じ合うものを持たない全く異なる世界の生きものだという冷厳な事実。そう思うと、立原位貫氏の版画も雅やかなだけではなく、あやしくざわめいて見える。


 
追記 
  『私の名前はうかんるり』・・・この一文を読んだ瞬間、一気に中学時代にタイムスリップした。「我が名はうかんるり」「我が名はうかんるり」・・・「うかんるり」っていう不思議な響きに浮かされて、友人たちと喚きあったものよなぁ。






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2014年06月25日

ジャージの二人 : 長嶋有

『ジャージの二人』 長嶋有

 以前(ずいぶん前)、長嶋有氏のエッセイを読んだとき、「なんかこう、フラットな・・・感じだなぁ」と思ったのだ。気持ちを大きく浮上させるような凸も、深く沈ませるような凹も、こけおどしのような尖ったところもない。ただ、時々登場するやけに具体的な名詞(「サボテンとバントライン」とか、「パイロット HI-TEC-C」とか)が身に沁みて、ああ・・・”と身悶えしてしまったのだ。

 失業中かつ妻が他の男と恋愛中である息子と、3度目の結婚生活が危うい父が、夏の終わりを群馬の山荘でジャージ姿で過ごす『ジャージの二人』。『ジャージの二人』の翌年、またも山荘にやってきた父子+もう一人『ジャージの三人』。なんかこう・・・やっぱりフラットな感じ。状況はかなりドラマチックだと思うんだが、そんな書きぶりはちっともない。ともすると「ユルい」見かけにおおいつくされそうになる。

 ただやっぱり、時々登場するやけに具体的な名詞やあまりに身近すぎるモノ(「プリングルス」とか、「輸入物のビスケットに貼り付けてある日本語のシール」とか)によって、世界がふと生々しくなるような気がするのだ。あまりにも具体的すぎて、普段は存在していても見えない、意識にものぼらないモノの名前を改めてつきつけられて脳が活性化するんだろうな、きっと。

 大きな凸も凹もない。ただ、たくさんの色んなことがフラットに、並列に、ぼこぼこと生まれ、存在する。この感じ・・・あれだ、以前読んだエッセイのタイトル・・・『いろんな気持ちが本当の気持ち』








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2014年06月22日

旅もしたいが引っ越しもしたい

 七月が近づいてくる。今年も青春18きっぷの夏が! と思うと旅に出たくてウズウズするのだが、今年は思うまま気の向くままに旅に出られない事情も・・・。

 引っ越しがしたいんである。どうしても自分の部屋が欲しくて。本を読んだり、絵を描いたり・・・家族が大音量で観るテレビの音に邪魔されない個室が欲しいのだ! 完全に私の我がままでの引っ越し希望だが、一応夫の了解はとりつけた。ただ、引っ越し費用は私の収入から捻出したいと思う。夫には引っ越ししなきゃいけない事情はないわけだし。で、引っ越し費用+自室を快適空間にするための諸々の費用+予備費として、100万くらい必要かなぁ〜と。と言う訳で、早く引っ越しをしたければ、それだけ節約生活も頑張らなくちゃいけないわけで・・・。あぁ〜

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2014年06月21日

輝く日の宮 : 丸谷才一

『輝く日の宮』 丸谷才一

 『源氏物語』に、幻の巻「輝く日の宮」は存在したのか?

 かなりな長編をけっこう夢中で読んだけれど・・・ 面白かったんだろうか? 私はこれを楽しんで読んだんだろうか? ん〜? 曖昧である。ちょうど今、『源氏物語』を読んでいるところなので、国文学者である主人公・安佐子が語り、考察する『源氏物語』成立に関するあれこれは刺激的だったし、『源氏』の読み方を教えられた部分もある。でも、『源氏』を読んでる最中でなかったらどうだったんだろう?

 主人公が国文学者ということで、『源氏物語』以外にも松尾芭蕉、為永春水、泉鏡花らの文学に関する知見、考察、感想、感慨が多く記されている。特に前半は『奥の細道』において、「芭蕉はなぜ東北に行ったのか」ということに費やされている。

 そういう文学的なあれこれに、安佐子の私生活〜一人で過ごす時間や、女友達との交流、家族との会話、学会でのバトル、男たちとの色事がからんでくるのだけど・・・ この安佐子という女性にほとんど関心が持てなかったことが、読後感を曖昧にしているんだろうなぁ。

 安佐子が少女の頃に書いた短編小説(サスペンスのような、幻想小説のような)にからむ出来事が、折々に安佐子の現実の中に顔を出すのにも、何か作者の意図があるのだろうけれど、その意図も私には推しはかれなかった。




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2014年06月18日

六月博多座大歌舞伎 夜の部

【恩讐の彼方に】
 過去の過ちを悔い、どんな償いをし、どんなに行いを改めても、犯してしまった罪は消えないし、その罪によって傷つけられた人、損なわれてしまったものは回復することはない。また、その罪によって傷つけられ者の憎しみや怨念は、相手がどのように悔い改めていたとしても、たとえ相手を殺したとしても、決して癒され消えることはない。そして人を憎む気持ちは何より自分を一番苦しめる。

 かつて多くの人を殺めてきた市九郎=了海(梅玉)も、彼を敵として追う実之助(翫雀)も逃れようのない罪や憎しみに苛まれ続けていた。逃れようのない苦しみから、それでも逃れたいと足掻き、果てしのない岩を掘りつづけることで二人は苦しまずにはいられない「私」から逃れようとしたのではないか。

  だとしたら掘るべき岩がなくなった時、この二人はどうするんだろう? ちらっとそう思ったが、岩が貫通したそのとき、二人を悩ませつづけた憑物も落ちた。

 ・・・耶馬溪の場面からはそんな感情移入をしながら観ることができたのだけど、序盤はなんだか芝居がギクシャクしていて落ち着かなかった。

 市九郎に殺される旅の夫婦・宗之助さんと壱太郎さんの存在が効果的でした。お二人とも上手い・・・何だろう? そう感じました。


【船弁慶】
 静が何か華奢だ! 儚げでひそやかで。 後に出てきた知盛の亡霊がやけに活き活きしていて、生きている静の方が幽かに見えたなぁ。

 長刀を振り回す知盛の霊、荒々しく登場の場面なんて特に格好良かったです(三階からだから花道はほとんど見えなかったけど)。でも、弁慶が数珠を揉むと身動きができなくなるあたり、敗者の哀しさがにじむ。

 静御前/知盛の霊・染五郎さん、弁慶・愛之助さん、義経・翫雀さん


【湧昇水鯉滝】鯉つかみ
 ファンタスティックと言えばいいのか、シュールと言えばいいのか・・・

 壱太郎さんの小桜姫…なよなよ、やわやわとしていて、何かたまりません。きっと、小さな子猫を抱いたときのようにくたくたと頼りない手触りなんだろうなぁ。ああ、たまらん。でも、名家の息女の貞操があんなにゆるゆるで大丈夫なんだろうか?

 小桜姫の恋する小姓志賀之助、実は鯉の精・愛之助さん、宝刀・竜神丸の威徳で正体を暴かれ庭の泉水に逃亡。鯉の怪物出現!で大仰になっていく舞台の非現実性と、その脇で小ぢんまりと上がる噴水の「ジョボジョボジョボジョボ・・・・」という妙に生な音との取り合わせがシュール。

 「え? 本水使うって、こんなちっちゃな噴水だけ?」・・・な訳はなく、次の場面では大きなプールが舞台中央にどーん! 今度は本物の志賀之助、実は釣家の若君〜勇ましい衣装に改めた愛之助さん。プールの中で待ち受ける大きな鯉には逞しい二本の足! 志賀之助と足の生えた巨大魚との水中大格闘! やばい、めっちゃ面白い。これは三階席からだから見えた光景だったのかもしれないけど、あの鯉の足・・・「これは見えてるけど見えないってお約束」と生真面目に考えなきゃいけないようなもんじゃなかったと思う。「足、ガッツリ見えてるけど何も問題ないよネ〜☆」くらいの演出の大らかさを感じました。だって実際、鯉に足があったってこの演目の魅力はちっとも損なわれていないもの。

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2014年06月16日

鯉つかみ

博多座の六月歌舞伎夜の部を観てきました。

「鯉つかみ」・・・巨大な鯉が二本足ですっくと立つ衝撃! 

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2014年06月10日

源氏物語 蛍〜匂宮

 地味に読み進めて「匂宮」までたどりつきました。

 穏和なお人柄に見える朱雀院。宮廷ではかなりあからさまにないがしろにされているようで、直視するのが悪いような気持ちになってくる。宮廷って怖い。

 貴公子たちのあまりに自分勝手で暴力的な振る舞いと、その行為に添えられる宮廷で磨き上げられたこの上なく優美な言葉のアンバランスさに胸が悪くなる。貴族社会って怖い。

 准太政天皇の待遇を与えられて、何かと気を遣う政の現場から距離をおくようになったためか、源氏の君がこれまで抑えていたのであろう自分大好きっぷりを露わにする場面がみられるようになってきた。容貌、容姿の美しさも、生まれの高貴さも、身についた嗜み、心ばえの見事さも・・・我ながら、すべてにおいて他の人たちよりも一段勝っているという自負。まさに「望月の欠けたることもなし」というほどの栄華。そんな源氏の君の心驕りに強烈な一撃を浴びせる六条御息所の怨霊の再登場は痛快でもあった。

 そしてもう一つの事件・・・朱雀院より源氏の君に下された女三の宮と柏木の過ち。柏木の人柄と才能を愛でる気持ちと、その信頼と愛情を裏切る行為への許し難い思い、そして自らにさし始めた老いの影への恐れ。様々な思いの渦巻く源氏の君の視線に打たれ病みつく柏木。このあたりの愛憎劇は凄まじい。

 「雲隠」・・・光源氏の死を暗示する題名だけの巻。本文はない。何と前衛的な。

 「匂宮」・・・匂う兵部卿に薫る中将。高校の古文の授業で『源氏』の貴公子たちの体臭云々の話が出たっけなぁ。なつかしい。

 ここからは未知の領域。一気に行きたいと思います。

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2014年06月07日

楽しい。すごく楽しい。・・・が

 この春から通い始めたカルチャーセンターの人物デッサン教室。とても楽しい。週末の仕事終わり、教室に向かう足取りは心の中ではスキップである。が、このあたりでは男性の美術モデルの方が少ないらしく、なかなか男性を描く機会はないようだ。やはり女性とは身体のつくりが違う男性も描いてみたいと思うのだけども。

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2014年06月03日

千と千尋

140603_122325.jpg四国に初上陸しました。
道後温泉本館の建物を生で見て感動〜 これが現役で稼働してるんだもんな〜
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2014年05月28日

長州シックス―夢をかなえた白熊 : 荒山徹

『長州シックス 夢をかなえた白熊』 荒山徹

 「夢をかなえた白熊」だの、「ひょっとこ葉武太郎」だの、「腰撫で襦袢」だの、なんか人をくったような副題が並んでるのを見ると、嬉しいんだか、イラつくんだかわかんない気持ちになって、「う〜ん、荒山、荒山」と唱えてしまう。

 欧州への密航留学生「長州ファイブ」には知られざるもう一人の同行者がいた。毛利公の落とし胤だという彼、白石阿定(しろいしくまさだ 通称シロクマ)がロンドンでかなえた夢とは?・・・「長州シックス 夢をかなえた白熊」

 富山藩から英語習得のため江戸に派遣された潤間寅之祐。彼の必死の体当たり英語修行とあの事件”との意外な関係。・・・「ウルトラ・ダラー 幕末英語教育事始」

 蛤御門の変で両手両足を失った足軽の葉武太郎は、いつしか「軍神」と崇められ・・・「シュニィユ ひょっとこ葉武太郎伝」

 身につけた者を辛抱たまらん気持ちにさせる「腰撫で襦袢」をめぐる奇妙な仇討譚とそれに熱狂した人々・・・「トゥ・バ・ビヤン 腰撫で襦袢伝奇」

 「五箇条の御誓文」はなぜ四条でも六条でもなく「五条」でなければならなかったのか・・・「ファイヴ・アーティクルズ 維新の魁」

 「ファイヴ・アーティクルズ」は「五条」という一点に奇想を盛り込みつつも、天誅組の乱の顛末を語る硬派な歴史短編だったが、それ以外の四篇についてはいつもながら、あんまりなネタの投入に「そんなバカな!」とクラクラしてしまう。しかし、どれもうまいことできてる”んである、嘘と史実がごちゃまぜになった幕末小話として。

 幕末という動乱の時代にも人がそれぞれものを思い、ものを食い、日々を暮した日常はあったはずで、ちょっと馬鹿馬鹿しくもあるこれらの話の裏に、そんな浮世の有様を思うと何だかしんみりしてしまう。

 激動の幕末を彩る大事件の陰に語られる・・・おもしろうてやがてかなしき法螺話。



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2014年05月27日

高額色鉛筆

 「絵を描こう」と思って画材を見に行く。まずはとっつきやすそうなところで、水彩絵具か色鉛筆を・・・と思ってハンズの画材売場をのぞいてみた。

 24色で7000円〜8000円もする色鉛筆とかあって驚愕する。想像を絶する書き味! 絶妙の発色! とかなんだろうなぁ。

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