2026年02月21日

博多座二月花形歌舞伎『あらしのよるに』(令和八年)

 森深くの泉から滾々と澄んだ水が湧きだすように情感の溢れ出る壱太郎さんのメイに思い切り心揺さぶられてきました。

 随分前、あらすじも何も知らない状態でアニメ版の『あらしのよるに』を観た時に ↓こんな感想を書いているのだけど、
 ・・・メイへの思いやりから、肉を食べなくなり、日に日に痩せ衰えていきながら、それでもメイへの笑顔は忘れないガブ

 空腹に耐え切れなくなり、ついにメイの群れの仲間を襲ってしまうガブ。目の前で友達ヤギをむさぼり喰うガブの姿を見てしまっても、友情は捨てることができず苦しむメイ。

 ・・・いつそんな凄惨なシーンがやってくるかとハラハラしました。

 もちろんそんなシーンはないのだけど、こういうことは、この物語の中に可能性として、というか運命的に内包されていて、メイはそのことに自覚的で・・・

 それでも、数々の苦難を乗り越えて、ガブと再び手を取り合うことができたことに全身をふるわせて歓喜するメイを見ていると、この歓びがずっとメイとガブの中で生き続けますようにと祈らずにいられません。


 草食動物の穏やかな可愛らしさの中に、勇気と聡明さと孤独を包んだヤギのメイ・壱太郎さん。優しさと寂しさとコンプレックスの中に野生と強さを隠した狼ガブは、もう獅童さんがガブなのかガブが獅童さんなのか。そして、狼ギロ・錦之助さん、ヤギのたぷ・精四郎さんはじめ、絵本のキャラクター味と獣の野性味を兼ね備えて物語を彩り、舞台の上をあっという間に切り立った岩山、やわらかい緑が広がる草原、美しい月の夜に変えて、物語の世界に連れて行ってくれた一座の皆さまに感謝。


2018年博多座『あらしのよるに』感想・・・http://bitter-sweet-pea.seesaa.net/article/462867612.html

アニメ『あらしのよるに』感想・・・http://bitter-sweet-pea.seesaa.net/article/388358689.html
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2026年02月20日

HIROSHIMA PRIDE

やっぱり、『むさし』の「若鶏むすび」は美味しい。

できれば、ここに『バスケはドラフラ』も入れてもらえないものだろうか。

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2026年02月13日

機械の仮病 : 秋田禎信

『機械の仮病』 秋田禎信

 ずいぶん前に見かけてタイトルが印象に残っていた本。古本で手に入れた。

 自覚症状が一切ないままに筋肉や内臓の一部が機械になってしまう『機械化病』。痛みも、違和感も、健康上の害も無いが、原因は解明されておらず治療法も無い。

 この奇妙な病が発見されて約10年。何の打つ手も無いままに病が蔓延する状況に人々が慣れつつある世の中。

 別れた恋人の死とその恋人が全身機械化していたことを知らされた青年、息子のクラスメイトの連続自殺と囁かれる機械化の噂、足が機械化してしまった短距離ランナー、機械化病ゆえに死ねない女性、機械化を怖れるアイドル 〜「機械化病」が姿を現す現場で起こる出来事を描く連作。


 ・・・例えば、ふと気づくと随分スマホに依存するようになっちゃってる・・・こういうのも人間の存在が一部『機械化』したってことなんじゃないかと思っていた。私たちはもう『機械化病』を患っているんだよと。

 でも、この小説で描かれているのは、そういう外部的な形での『機械化』ではなくて、もっと内部的なものだった。多分、力点は『機械化』ではなく『気づかないうちに変わってる』っていう方に置かれているのだ。

 『走っていない時は、余所の家の台所にいるように感じる。』

 機械化した足でなおも走りづるけるランナーの言葉。生きる上で感じる名前をつけがたい違和感。それに何とか名前をつけるとしたら「余所の家の台所」ということになるのだろう。この名づけがたさが何とも生々しい。

 名づけられないが故に見えなくなりかけていた居心地の悪さの名前を探す。そんな小説だった。

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2026年01月31日

童の神 : 今村翔吾

『童の神』 今村翔吾

 「子ども」を意味する『童』という字の成り立ちを調べたことをきっかけに、鬼と恐れられ蜘蛛と忌み嫌われたこの『童』の字を名前に冠する者たち物語が降りてきたのだそうだ。

 大百足や土蜘蛛、鬼といった怪物退治の伝説として語られてきた物語を、歴史の中で生きた人間の物語として語り直す。

 辛い結末が予期されるだけに、桜暁丸たち登場人物の姿が魅力的に描き出されるほどに先へと読み進めていく気持ちが怯んでしまうところはあったのだけど、漫画やアニメのバトルシーンが目に浮かぶような目まぐるしいスピード感と迫力ある「まつろわぬ者」たちの特異な戦いぶりや、心を昂らせる熱い台詞の数々・・・とにかく高いエンターテイメント性でぐんぐん読ませる。

 散りばめられた史実の部分を深く知っていればさらに面白く読めるのだろうなと思う。


 哀しみの中にも、つながっていく未来に向かって爽やかな風が吹き抜けていくような幕切れのあざやかさに、しばしその風景の中に取り残されたような気分を味わった。

 
 この物語の前段にあたる平将門の時代の物語と本作の後の世を描く物語も構想されているとのこと。この時代の歴史を少し学んでから読みたいなと思う。

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2026年01月24日

幸村を討て : 今村翔吾

『幸村を討て』 今村翔吾

 『関東勢百万も候え、男は一人もいなく候。目指すは大御所の首唯一つ!!』

 大坂夏の陣・最後の決戦。赤き塊となって徳川軍の奥深く突貫を繰り返す真田隊。倒れる金扇の馬印。しかし・・・。

 家康をピタリと狙った幸村の十文字槍はなぜ外れたのか。戦国最後の戦いに臨む敵味方両陣営に張り巡らされた真田の策。読み応えのある歴史ミステリー。

 真田の物語というといまだに大河ドラマ『真田丸』の印象が強い。草刈正雄の真田昌幸、大泉洋の信之、堺雅人の信繁(幸村)が目の前にちらついて、最初はちょっとストーリーに没頭する妨げになってしまったけど(特に藤井隆演じる佐助に「面白くない人」と言われてた大泉洋の信之)、それもほんの少しの間だけ。

 徳川家康、織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永、真田信之〜それぞれが戦った大坂の陣が語られ、隠されていた思惑、忍ばされた策が明らかになっていく。

 いままで見たことのない大坂の陣、見たことのない真田父子の姿が眼前に広がる。「うぅぅぅぅんんん!」思わず腹から湧き上がる声とともに、大スクリーンで観ているような感覚で楽しんだ。

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2026年01月10日

今年はなるべくポチらずに本屋に行こう 〜 『本屋の未来を、なぜか僕らが考えてみた』 : 坂上俊次 寺嶋良

『本屋の未来を、なぜか僕らが考えてみた』 坂上俊次 寺嶋良

 2025年12月28日広島サンプラザ〜広島ドラゴンフライズvs.茨城ロボッツの試合会場。寺嶋選手のサイン本を販売する呼び込みの声が聞こえて、「後で買わなくちゃ」と思ったんだけども、新グッズをチェックしたり、アリーナグルメを味わったり、何より会場でゲームを観戦する高揚感にフワフワしているうちに、うっかり買いそびれてしまった。

 また試合会場で販売してくれるかなぁ・・・でも、次に会場に来られるのは3月以降になるしなぁ。早く読みたい気持ちが勝って、お正月についネットでポチってしまったのだけど・・・。数日後、ポストに投函された本を手に取って、「何てことをしてしまったんだっ」と自分を叱った。この本は本屋に足を運んで買うべきだった。そうすれば、店の佇まいや匂い、光の加減、本が置かれた棚のビジュアル、その一角が放つ空気感、店に行き来する道のり・・・そういったものとともにこの本を手に入れた時のことを記憶に刻むことができたのに。

 創業百年近い老舗書店、街道沿いの大型店、人が行き交う駅ビル内の店舗、地域の人に愛される何でもありの本屋、店主の想いが色濃く反映される個性的な店、広島の繁華街の中心に建ち続ける古書店。RCCアナウンサー・坂上俊次氏が書店ではたらく人たちにインタビューをし、本屋の役割や町に本屋があることの意義、本屋の未来を語り合い、読書好きで知られる広島ドラゴンフライズの寺嶋選手が店を訪ね、感じ、考える。

 結婚前まで暮らしていた広島の街を頭に描きながら読む。当時とは変わってしまった場所も多いけれど、学校の休みの日に、仕事の帰りによく通った店のいくつかが今も同じように営業している様がうかがえて懐かしい。

 特に思い出深いのは百貨店そごうが入る広島バスセンタービル6階の紀伊国屋書店。ここでは何度も「本に呼ばれる」「棚に誘われる」という体験をしてきた。大学受験のための参考書を買ったのも、スヌーピーのペーパーバックのコミックを買ったのも、アーサー・ラッカムの挿絵に惹かれて『ニーベルンゲンの指環』シリーズを買ったのもこの店。そして、寺嶋選手も文具コーナーの万年筆に目を奪われているけれど、そうそう、ここの文具コーナーは魅惑的だった。ケースの中にちょっと高級で装飾的な文具が並んでいて、眺めていると贅沢な気分になれた。中学校入学前のお祝いだったか・・・この文具コーナーで子どもが持つにはちょっと値の張る可愛らしいシャープペンシルを買ってもらった。私にとってそれはそれは特別な一本で、触って眺めてキラキラした気分になっていたのだが・・・嬉しすぎて外出の時にも持ち歩いていたのが徒になって買ってもらってほどなく紛失してしまったという。嬉しさと哀しさが詰まった思い出。

 もう一つは本通りにある古書店・アカデミイ書店。店が刻々と入れ替わっているアーケード街の中で、今も営業しているのか気にかかっていたのだけど、昨年夏に久しぶりに訪れることができて、その変わらなさにほっとした。乱歩の文庫を2冊買った。広島に住んでた当時は仕事帰りに棚をチェックしに寄っていたが、入り口付近の文庫コーナーと大判のマンガなどを置いたコーナー、雑誌が積み重ねられたゾーンを覗くくらいで、二階に上がるのは何だか敷居が高かった。今度、勇気を出して二階をじっくり見て回ってみたい。


 ところで、この本を読んでいると、書店員さんたちの仕事ぶり、思いやこだわりなども感じられてくるのだけど、そこでふと思い出された店がある。今はなくなってしまったんだけど、以前、博多駅ビル・マイングの一角にあった書店。決して広くはない売り場面積の割に、明らかに高橋葉介氏のマンガの品揃えが充実しすぎていたのだけど、あそこには一体誰の、どんな思い、ドラマが秘められていたのだろう?

01.広島 蔦屋書店
02.Lounge B books
03.フタバ図書 TSUTAYA MEGA 中筋店
04.ウィー東城店
05.紀伊国屋書店 広島店
06.BOOK GALLERY KOBUNKAN
07.kagi books
08.ジュンク堂 広島駅前店
09.啓文社 ポートプラザ店
10.アカデミイ書店

本屋の未来.JPG


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ラベル:寺嶋良
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2025年12月23日

やっぱり一人旅は楽しい〜長崎2泊3日(実質1泊2日)

 軍艦島クルーズとハピネスアリーナでのバスケ観戦を主な目的にした長崎旅だったんだけど、出発前に予約していた軍艦島クルーズ運航会社のHPを確認したところ、今年5月に船舶検査の有効期限を超過した状態で運航していたとのお詫び記事が・・・。この機会を逃すとまたいつ行けるかわからないので悩んだんだけと、やっぱりあまり良い気持ちはしないので泣く泣くキャンセル。でも、結果、時間にも体力的にも余裕ができて、のんびりした良い長崎旅になりました。

 1日目は移動のみ。仕事を終えて福岡から高速バスで長崎へ。イルミネーションが輝く長崎駅前から歩いてホテルへ。途中、ショッピングセンターの食品売り場で夕食用のお弁当購入。ビジネスホテルの狭いユニットバスではありますが、あったかいお湯で身体をあたため、ベッドに腰かけて値引きシールの貼られたごぼうサラダとローストポーク丼のお弁当を頂く。ボリューミィなお弁当を消化しきれてないけど、明日に備えておやすみなさい。

 2日目。軍艦島クルーズをキャンセルしたせいで時間がたっぷりある。でも、このところ父の入院その他で福岡ー広島を往復しつつバタバタ過ごしていたので、あまりガツガツ観光を詰め込みたい気分でもない。まずは、以前長崎に来た時に遠目に見て「あれは何だ?」と気になっていた出島を再現した一角へ。当時の遺構なども見ることができるのだけど、現在は目の前まで街の建物が迫っていて、海に向かって開かれていたかつての姿をありありと思い浮かべるには、私の想像力は足りなかった。

 続いて新地中華街へ。ここで饅頭でも買って朝食がわりにしようと思ったんだけど、昨夜のがっつりな夕食がまだお腹に残ってる感じで食欲がわかない。さらっと通過するのみにして近くの唐人屋敷跡へ。

 このあたりは以前来た長崎旅の時にも歩いていて、階段になった路地の雰囲気がとても良い。ふとした時に思い出す好きな風景の一つだったんだけど、また来ることができて良かった。写真の腕がなくて、この風景を上手く切り取れないのが悔しいけど、想い出は写真ではなく心にやきつける派なので。

長崎1.jpg


 つづいて、花街のあった丸山あたりを散策。中の茶屋ではお庭と建物を拝見させていただいて、しっとりした時間を過ごしました。何の由緒ある建物か!と目をとめると入口にお巡りさんが立っていた丸山町交番。写真を取り忘れたのが悔やまれるけど、想い出は写真ではなく心にやきつける派なので。

長崎2.jpg  長崎3.jpg

 昨日のローストポーク丼がまだまだお腹に居座ってる感じで、正直お腹は空かないのだけど、昼はトルコライス!と決めていたので、浜町アーケードのビストロ・ボルドーへ。何種類もあるトルコライス、どれもボリュームたっぷりなんだけど、中では一番軽そうなフィッシュフライのトルコライスをいただきました。

トルコライス.jpg


 さて、いよいよハピネスアリーナへ! 長崎ヴェルカvs.サンロッカーズ渋谷戦を観戦です。いつ予約サイトをみてもチケット完売してる印象のある長崎ヴェルカ。案の定、一般発売開始時にはもう立見席しか残っていない状況でした。

 で、立見席ですが・・・正直、低身長には厳しいです。身長150pほどの私ではテーブルがかなり高い位置に来てしまい、普通に立った状態の目線ではこんな感じ↓

ハピアリ.jpg


 まあ、試合の流れを追って自然と前のめり&背伸びしてしまうので、試合中コートが見づらいと感じることはありませんでした。

 それにしても長崎強い! ディフェンスがエグい。応援の圧が凄い。1月と4月には私の応援する広島ドラゴンフライズもここでヴェルカと対戦する。勝利を掴んでほしい! 頑張れぇ〜〜〜〜! できれば現地まで応援に来たいのだけど、無理かなぁ〜〜〜

 試合終了後は歩いて出島ワーフへ。夕食をいただきます。

まぐろ丼.jpg


 マグロ漬け丼と杏露酒ソーダ割り。赤身と中トロたっぷり。またお腹パンパンにしてホテルに帰還。

 3日目。お昼まで時間はあるのですが、昨日のゆったり観光ですっかり満足。バスの時間までは長崎駅構内のカフェで持参した今村翔吾『幸村を討て』を読んで過ごすことにします。こんなに適当で勝手な時間の過ごし方ができるのも一人旅ならでは。ゆっくり羽をのばした2.5日間でした。楽しかった〜〜〜。
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2025年12月14日

新編 忠臣蔵 : 吉川英治

『新編 忠臣蔵』 吉川英治

 年頭の答礼の為下向する朝廷からの勅使饗応の役に任ぜられた赤穂藩主・浅野内匠頭と指南役である高家・吉良上野介。浅野家からの贈りものが少ないことを不服に思い陰湿な嫌がらせを繰り返す上野介と、その仕打ちに身を震わせながら必死に耐える内匠頭。むむ、これは、悪役・吉良と高潔な殿様・内匠頭の構図? 主君の無念を忠義の家臣たちが艱難辛苦の末に晴らす胸熱くする仇討もの? と思ったんだけどもさにあらず。

 大石内蔵助をはじめとする四十七人の浪士たちが主君の遺恨の相手である吉良上野介の首をあげるまでの物語でありながら、意外にも忠義とか仇討とかいった時代がかった感じは薄く、生きにくい世の中で、それでも美しく生きていきたいと思う、現代に生きる人の心を映した物語だと感じた。

 幕府による悪政、風俗の糜爛、価値観や世代、立場の違いによる人の世の分断。人間の価値が犬以下とも見なされる世の中で、様々に心乱されながら、それでも自分の心を偽ることなく、悔いのない生涯を生き抜いた人の姿が歌うような語り口で描かれる、吉川流『美しい人の生き様』。

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2025年12月06日

ゴールデンカムイ 鶴見篤四郎の宿願 : 伊吹亜門・野田サトル 

『鶴見篤四郎の宿願』 伊吹亜門・野田サトル 原作/イラスト

 谷垣源次郎一等卒、菊田杢太郎特務曹長、宇佐美時重上等兵、尾形百之助上等兵、月島基軍曹・・・日露戦争の最中、鶴見篤四郎中尉率いる鶴見小隊の兵士たちの間に起こる不可解な事件。その裏に隠されたものの正体とは・・・

 原作に描かれたそれぞれの人物たちのキャラクターを際立たせたストーリー運び。原作者・野田サトルの手による挿絵。原作のあの場面やその場面も盛り込まれて、まさに原作の周辺に広がる世界を味わう面白さ〜スピンオフの楽しみ満載。

 宇佐美による精神的・物理的暴力をなんとなく受け流すことができる前山さんって、やっぱりちょっと底知れない人だったんだなって。それを思うと尾形は何てことしてくれたんだって・・・。

 尾形百之助にまつわるエピソード『時にはやさしく見ないふり』で鶴見中尉が「やさしく見ないふり」をしたのは、尾形自身でさえ気づこうとしていない尾形の本心ってことなのかな。

 『稲妻強盗』と『シマエナガ』のBlueRayは、ちょっとバタバタしていてまだ観てない。正月休みにでもみようかな。

鶴見劇場.JPG


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2025年11月29日

ミステリーと言うよりも・・・ 一次元の挿し木 : 松下龍之介

『一次元の挿し木』 松下龍之介

 高齢の父が手術のため入院した。1時間足らずで手術は無事終了し、2時間後には普通食を食べ、身の回りのことも自分でできるくらいに回復はしたのだけど、抜糸して退院するまでには1週間ほどかかるという。父が飼ってる猫の当面の預け先がなかったため、父が退院するまでの1週間を実家で過ごすことになるが、お見舞いと実家の片付け、少量の洗濯、猫の世話以外にすることもない。暇な時間を紛らわすべく実家近くの本屋さんで買った1冊。帯の言葉を見て想像する通りのエンターテイメント性の高いミステリーなら、気分を紛らわせるのにちょうどいいと思ったのだけど。

 大学の担当教授からヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨のDNA型鑑定を依頼された七瀬悠。その古人骨のDNAは四年前に失踪した義妹・紫陽のものと一致した。

 鑑定ミスやサンプルの取り違え、データの改竄などがないのなら、紫陽の出生に「そういうこと」が隠されているってことは容易に推測できる、っていうか、あの思わせぶりなプロローグを読んだ後では、それしかないだろうっていうか・・・。

 「そういうこと」であるなら、悠の身辺で起きる不可解とされていることは、さほど不可解とも思えず、ミステリ―としての味わいは薄い。むしろホラーとして読んだ方が面白いのでは。禍々しきものの到来とともに聞こえる「ちゃぷん」という音はとても恐い。



 『厳格さを携えた眼差し』
 『垂涎に値する』
 『黒く染まった分厚い雲を稲妻が紡いでいる』
 『七瀬悠は、誰もが目を引くほどの精悍な顔立ち』

 ・・・こういう言葉づかい、日本語の表現としておかしくない? と気持ち悪く思いつつ、作者独特の文学的意図があるのかと無理にでも考えてみたのだけど、緊迫する大詰め間近に発せられる『女の子はいつでも、好きな人には自分の一番かわいい姿をみていて欲しいんです』っていう台詞に、びっくりするほど共感できなかったことで、「あ、私、この本の読者として不適切だったんだ」ということに気づけて何かすっきりした。

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2025年11月22日

約束された移動 : 小川洋子

『約束された移動』 小川洋子

 世界を魅了したハリウッド俳優と彼が宿泊した部屋に遺していく秘密を知る客室係。

 幸せとは言えない結婚生活を送った皇太子妃と彼女が身につけたひとつひとつの衣服を自らの手で再現する女性。

 デパートの迷子が発する合図を決して見逃さない黒目を持った元迷子係と『世界との協調を見失った子ども』たち。

 駅前を彷徨う老女と彼女に『寄生』されてしまった青年。

 座礁した貿易船から流れ着いた二頭の白い羊が産んだ真っ黒な子羊と、庭にその黒子羊のいる場所で託児所『子羊の園』の園長となった女。

 小鳥を愛し、生まれ故郷の地域語のみを使う世界的大作家と通訳係である私。



 世界のどこか片隅で、誰も知らない密やかで濃密な関係を結ぶ一組の魂。それぞれの孤独の形をぴったりと寄り添わせて離れがたく結びつき、たどり着くべき約束された場所を儚い夢に見る物語。


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2025年11月05日

百年の子 : 古内一絵

『百年の子』 古内一絵

 創業百年を迎える老舗出版社文林館を舞台に、戦中・戦後から高度経済成長期、子どもたちの学びの為の学年誌の出版に携わった人たちの苦闘と、社の「学年誌創刊百年企画チーム」への異動を期に、その学年誌出版の歴史に目を向けることになった女性編集者の姿が令和〜昭和の時代を行き来して描かれる。

 女性ファッション誌の編集部から「学年誌創刊百年企画チーム」への意に添わない異動を命じられた市橋明日花。やり場のない不満をくすぶらせていた明日花だが、希望とは違う編集部でも前向きに働く同期の言葉に背を押され、改めて今の仕事と向き合う気持ちを固める。そんなとき太平洋戦争中の入社者名簿に、仕事で忙しい母に代わって自分を慈しみ深く育ててくれた祖母の名前を見つけ・・・。

 現代を生きる一人の女性に寄り添っていた視線は、やがて、女性や子供の人権意識がまだ低かった時代に、子どもたちが自ら学び自由に伸びていく助けとなるようにとの想いをこめて学年誌や児童文学の編集、出版に携わった人たちの物語へと導かれていく。

 学年誌出版の現場をのみこんでいく戦争の波。苦難の時代の物語だけれども、明瞭な語り口、鮮やかな風景、生き生きとした表情を見せる人物たちに引き込まれて次へ次へとページを捲っていく。理想を掲げ、希望を抱き、情熱をもって、大きな後悔と失敗の中から立ち上がって進み、つながっていく人たちの美しさに溢れた物語であると同時に、職場、家庭、男女間、女性同士、家族、世代間・・・様々な場所に横たわる格差、分断、無理解の有り様もそこには刻みつけられている。

 理解したからといって、全ての問題が丸く収まるわけではない。それでも、学ぶこと、考えることを諦めずに続けていった先に見えるかもしれないものをやわらかな言葉で指し示してくれる。わくわくと読むうちに、いつしか固くこわばった大人の心を優しく耕し、気づきの種を蒔いてくれる・・・これは、私たちのための『児童文学』なのかもしれない。

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2025年10月30日

どちらか手に入るとしたら

AIを自在に駆使するスキルと、身一つで大自然とわたりあう力、どっちがいいだろう?
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2025年10月24日

祈るような気持ち

もう何度も観てるのに、

最後の花道のシュートを

「入れ! 入れぇ〜〜っ!」と、

毎回、祈るような気持ちで見てしまう。

今年の夏もあと2日。

hanamichi10.JPG


THE FIRST SLAM DUNK 2025 in cinema
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2025年10月17日

宇喜多の楽土 : 木下昌輝

『宇喜多の楽土』 木下昌輝

 観光で岡山城を訪れて、この地を領した宇喜多直家にまつわる黒い噂に興味をそそられ、「宇喜多家を題材にした小説を読みたい!」と思ったのが十三年前。業の深い「悪人」宇喜多直家の暗黒を描ききった『宇喜多の捨て嫁』に出会った時の、「まさに! まさに、こういうのが読みたかった!」という震えは忘れ難い。


 幼くして宇喜多家を継いだ八郎(秀家)の手には一枚の貝殻が握られていた。川辺で歌を詠む貴人と対岸の村人の姿が彩色された貝合わせの貝殻。それは、父・直家が密かに進めていた悲願ともいうべき事業とともに八郎に託されたものだった。

 秀吉に重用されて力をつけていく秀家。しかし、秀吉の駒として戦場に駆り出され、家中にはつねに火種を抱え・・・胸に抱く目指す場所への道のりは遠い。秀吉の死によって世は揺らぎ、宇喜多家は家を割る騒動も鎮まりきらぬまま、命運を賭けた関ヶ原の戦へ。

 豊臣秀吉、徳川家康といった傑物、怪物がうごめく中で、宇喜多秀家が圧倒的にいい人、普通の人なんである。戦国の曲者、化け物たちとわたりあうために父・直家のような悪人にもなれず、自分の信念の為、また生き残るためにきめたはずの非情な覚悟も、ことあるごとにぐらぐらに揺らいでしまう。目指したものは指の間からこぼれていく。

 普通にいい人〜そんな秀家の生涯には、『宇喜多の捨て嫁』を彩っていた闇に咲く血の色の花のような強烈な色彩はない。しかし、敗れたあともその生涯を最後まで生きた。その「強さ」には、何か彼なりの覚悟がにじんでいるように見えた。

 文庫の解説者・史家の大西泰正氏が『秀家をめぐることどもを、さらに書き綴ってみたい。』『宇喜多秀家の可能性を堪能いただきたい。』という言葉を寄せられている。まさに「秀家をめぐることどもを、もっと読んでみたい。」「宇喜多秀家の可能性をもっと味わいたい」と思わせる読後感だった。


『宇喜多の捨て嫁』感想・・・http://bitter-sweet-pea.seesaa.net/article/434922401.html 


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2025年10月06日

邪魅の雫 : 京極夏彦

『邪魅の雫』 京極夏彦

 「百鬼夜行シリーズ」(このシリーズ名何かしっくりこなくて、私は「京極堂シリーズ」と呼びたいのだけど)を読むのは十数年ぶり。前作の『陰摩羅鬼の瑕』がかなり薄味だったので、このシリーズを読むのはしばらくお休みしていたのだけど、まさかこんなに月日が経っていようとは・・・。

 ノベルズ版で読んだのだけど、この手にずっしりくる厚みと重みにワクワクする。江戸川、大磯、平塚・・・捜査の手も追いつかぬほどに次々と発見される毒殺死体。これは連続殺人なのか・・・

 ああ、読んでいると頭と視界がグラグラするような、正体のわからない混乱が帰って来た。

 しかし、事件の陰にはこれまでのような「妖怪」の姿は無く、ズレて重なり合ういくつもの世界。その有り様を明らかにしていく京極堂の語りは名探偵の如く・・・。今作は何だか本格ミステリーだ。

 そして・・・あの人物が出会ってしまったのが榎木津でなかったら・・・この悲劇は起きただろうか? 探偵を名乗る榎木津礼二郎という人の唯一無二性、その孤高の美しさと孤独が際立つ物語でもあった。

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2025年10月03日

2025の夏が来る

今年もあの熱い夏がはじまります!

2025夏.JPG
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2025年09月19日

それでも挫折した 〜 『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』 

『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』  東京大学教授 西成活裕/聞き手 郷和貴

 中学数学で身につけるべき内容=二次方程式(代数)、二次関数(解析)、ピタゴラスの定理と円周角と相似(幾何)を5日間のカリキュラムでマスターしよう!という内容。

 1日目は「なぜ数学を学ぶ必要があるのか?」「現実社会で数学がどのように活かされているか?」のお話。2日目は中学で学ぶ数学の概要。

 3日目からいよいよ二次方程式に挑んでいくわけだけども、まだ二次に話が進む前段、「負の数」が出てきたところで、本を開いたままコックリコックリ居眠りしている自分に気づいて心底びっくりした。「早くも頭の電源落ちちゃうのか私っ?!」 自分の拒絶反応の強烈さに笑った。ダメだこりゃ。

 それでも、なんとか3日目の二次方程式、4日目の二次関数と読み進め(先生の言うことは聞いてるけど、腑にはまったく落ちてない)、5日目の幾何へと進んだけど、補助線引いて、ああして、こうして・・・・ってとこで挫折。思考のスタミナがつきた。腑に落ちないどころか言葉やイメージが頭に入ってこない。

 数学にチャレンジするためにはまさに先生の言うところの『思考体力』=「自己駆動力」「多段階思考力」「疑い力」「大局力」「場合分け力」「(思考の)ジャンプ力」が必要だってことを思い知る。いや、それもそうだけど、言葉じゃなくてグラフや図形で物事を考えられる地頭が必要なんじゃないの? あ〜 無理。

 そもそも『学校の授業とは違うアプローチで中学数学を最短ルートで攻略しよう』という本書のコンセプトが、『授業で教わった(けどわからなかった)数学をもういっかいやり直してみたい。学校で習ったことってどういうことだったのか噛みしめたい。』という私のニーズとは合わなかった。

 でも、まだ諦めませんよ。

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2025年09月03日

木挽町のあだ討ち : 永井紗耶子

『木挽町のあだ討ち』 永井紗耶子

 宵闇迫る木挽町。雪の降る裏路地を、唐傘を差し赤い振袖を被いた人影が行く。行く手を遮る一人の博徒。博徒めがけて”やっ”と脱ぎ捨てた振袖の下には、白装束に身をかためた匂いたつような前髪の若侍。

『我こそは井納清左衛門が一子、菊之助。その方、作兵衛こそ我が父の仇。いざ尋常に勝負』

 白装束を返り血に染め、芝居小屋からもれる薄明りの中、討ち取った首を手に立つその姿。これぞ世に言う「木挽町の仇討」。


 まさ一枚の錦絵のようなこの「仇討」に秘められた真実をめぐる物語。

 仇討の目撃者である森田座の木戸芸者・一八、元武家の立師・与三郎、衣裳部屋で働きながら女形として舞台にも立つ芳澤ほたる、小道具方の久蔵、筋書の金治・・・悪所と呼ばれる芝居の世界に生きる場所を見出した人たちが語る自らの来し方と、目にした仇討の顛末。苦い思いを噛みしめながらも心の中の大切なものを汚すことなく生きてきた清々しさに、語りを聴き終えるころにはすっかり彼らの贔屓になってしまっている。同時に、彼らの語りが重なり合う毎に菊之助のあだ討ちの真相が浮かび上がってくる、そのミステリーの塩梅もにくい。

 清々しいというにはあまりに切ない。仇討をたてて江戸に出てきたものの途方にくれて芝居小屋に身を寄せる菊之助も、芝居小屋に生きる人たちもとにかく愛しい。

 ぜひ歌舞伎の舞台でも観てみたい。博多座でもやってくれないかしらん。

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posted by sweet_pea at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 な行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年08月28日

歌舞伎『刀剣乱舞 東鑑雪魔縁』

感想を一言で言うならば、
『歌昇さんの男前がすぎる』

もちろん他にも色々あるんだけど、視線のほぼ全てを歌昇さんにさらわれてしまったもので・・・
もっと良い席で観ればよかった。

シネマ歌舞伎化と円盤化を待ってる。

歌昇_陸奥守1.2.jpg


歌昇_陸奥守2.jpg

posted by sweet_pea at 11:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎観劇の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする