ある日、ある時、この世のどこかに現れてひっそりと開かれる「夜市」。いくつもの世界につながり、この世ならぬものたちが、ありとあらゆるものを売り買いするその市に迷い込んだ一夜のお話。
高校時代の同級生・裕司に誘われ、何も知らないまま「夜市」に連れて行かれた大学生・いずみ。
「夜市」ではありとあらゆるものが売られているが、そこで何も買わない者、何も欲しいものが見つからない者は「夜市」から出ることが出来ず、「夜市」の一部になってしまう。
なぜ裕司は、いずみに何も知らせないまま「夜市」に誘ったのか・・・?
自分たちが「夜市」から出られなくなっていることに気付いたいずみに裕司が語り始める。
少年の頃、弟と共に迷い込んだ「夜市」で、自分が元の世界に戻るために、幼い弟を売って「野球」の才能を買ったこと、そして今、その時売った弟を買い戻すために「夜市」にやってきたこと。
なぜ裕司は、いずみに何も知らせないまま「夜市」に連れてきたのか・・・?
自分が暮らす世界のすぐ地続きに口を開けている異界の不気味さもさることながら、自分とともに異界を行く、すぐそこにいる人の心の量れなさ、正体のわからなさ・・・そのことの方が胡乱な闇を生み怖ろしい。
裕司の心は「夜市」に飲み込まれてしまったのか・・・。裕司が抱えていた罪の意識、この世で生きる価値を信じられない苦しさ、虚しさ、自分をつなぎとめておけない弱さ・・・。その心には量りきれない闇がある。
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