2018年01月10日

バンドネオンの豹 : 高橋克彦

『バンドネオンの豹』 高橋克彦

 当時は月に何冊かの音楽雑誌を読んでいて、あがた森魚氏の名前も『バンドネオンの豹』というアルバムタイトルもそれらの雑誌で目にしたのだった。

 その月光の照らすロマン溢れる世界への憧れとノスタルジーを掻きたてるタイトルに誘われてライブを聴きに出かけた。情けないことに、その時聴いた音楽のことは殆ど忘れてしまったのだけど、何度か足を運んだライブ会場の居心地の良さは今でもほんのりと覚えている。

 物語はあがた森魚の音楽とも微かに連動する、私たちにとってはあらかじめ失われた場所〜見たこともないのに懐かしい心の奥の感傷を掻き立ててやまぬ魂の故郷ともいうべき世界をめぐる冒険譚。

 選ばれし少年たちはあたりまえの日常を抜けだし物語の世界の住人となって、謎のヒーローや怪人たちと丁々発止の冒険を繰り広げるのだけれど、「ひょっとすれば・・・」と著者が記しているように、この物語自体が登場人物である藤村少年の生み出した妄想であるのかもしれない。しかし、もしもこの物語が少年の妄想だとしても、いや少年の妄想であればこそ私たちの胸は切なさに絞られるのだ。

 


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posted by sweet_pea at 22:26| Comment(0) | 作者名 た行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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