2018年06月19日

松本幸四郎改め二代目松本白鸚 市川染五郎改め十代目松本幸四郎襲名披露 六月博多座大歌舞伎 夜の部

【平家女護島】俊寛
 様々な役者が演じるのをこれまで何度か観てはいるのだけれども、正直なところ私の中で今一つ良さが理解できない、味わいづらい演目だった『俊寛』なのだが、五年前(もうそんなに経つのかとブログの過去記事を見て愕然)、六代目勘九郎襲名公演で仁左衛門さんが演じる『俊寛』を観て初めて泣いた。初めて俊寛という人物に触れた気がした。

 (その時の『俊寛』感想がこれ→http://bitter-sweet-pea.seesaa.net/article/388359641.html

 そんな仁左衛門さんの俊寛、やはり素晴らしい。

 歌舞伎を観るのはほぼ博多座に限られているのだけど、その限られた中でも仁左衛門さんには、この『俊寛』の他にも『時今也桔梗旗揚』光秀『引窓』南方十次兵衛などで鳥肌の立つような、あるいはこの上なく心地良い観劇体験をさせていただいている。仁左衛門さんは当代一上手い役者なのではないかと私は思う!(できれば、仁左さまの『お祭り』を観てみたい!)

 配役を見たときにちょっと「!」と思っていたのだけど、成経・雁治郎さんと康頼・猿弥さん。流人の割りにはふくふくしたお顔と身体つき。康頼・猿弥さんは化粧の具合で精悍で物思わしくも見えるのだけど、白塗りのお顔で島の娘・千鳥と手をとりあう成経・雁治郎さんは流謫の貴公子というよりも放蕩がすぎて勘当された商家のぼんに見えて困った。

 そしてやっぱり何度も言うけど、瀬尾を見殺しにする丹左衛門は腹黒いと思うのだけど・・・。


【新皿屋敷月雨暈】魚屋宗五郎
 10年前(っ!?!)に巡業で観た時の感想(http://bitter-sweet-pea.seesaa.net/article/388358971.html)を読み返してみて、なんだか解ったようなことを書いているのに自分で驚いたのだけど、実はこの演目も、これまで私にはどう思えばいいのかよくわからないお芝居だったのですよ〜。お蔦の殺され方のあまりの残酷さに比べ、その死を悲しむ宗五郎たちの様子がどこか気の抜けたような、のほほんとした様子にも見えるのが何だかどうにもアンバランスなように思えて飲み込みづらかった。

 でも、白鸚さんの宗五郎を観てて、皮膚から沁み込むように色んなことが感じられました。生きていれば降り掛かってくる辛くてやりきれないあれこれも酒と金で胃の中に流し込み、飲み込みきれない悲しみも遣る瀬無さも無理やり腹に押し込んで日々生きていく市井の人々。だんだんと酒に乱れていく宗五郎の姿には、市井に生きる人の喜び、哀しみ、弱さ、強かさ、様々な暮らしぶりが重なって見え、言葉にしづらい様々な感情が染み入ってきました。

 それから、↑の巡業での感想では私、「空気の読めない男」だと感じていたらしい小奴・三吉。今回の舞台をみて「空気が読めない」どころか、三吉の存在がこの場の空気を醸すのに大きな役割を担ってるのを感じました。ただ悲しい、悔しい、恨めしい、だけに染まるわけではない日々生きている人の心持ち。そんな日常の場でさりげなく、それでいてその場の空気感を左右するほどに大きな役なんじゃないかなぁ、三吉。さすが亀鶴さん上手い。(最初、あんまり声も姿ものほほんとしてるもんで亀鶴さんだって気づかなかった。このところ亀鶴さんは渋い役や男前な役で観ることが多かったので)

 酔っぱらって磯部の屋敷へ駆け出していく宗五郎を追う女房おはまの姿に滲む、宗五郎とおはま夫婦の関係性も好き。

 これまでなかなかわからなかったこの演目の良さ、味わいに、じわっと触れさせてもらった忘れられない体験になりました。


【春興鏡獅子】
 広間に引き出された小姓弥生の恥じらいと戸惑い、その恥じらいと戸惑いのまま踊りだす可憐さ、獅子頭が自分の意志で動き出したときの慄きっぷり、獅子頭にひかれて駆けだす姿のなよやかさ・・・。弥生ちゃん、色々たまらんです。

 弥生が駆け去ったあとに登場する胡蝶の精(この胡蝶の精については、私、歌舞伎を見始めたばかりの頃にちょっとトラウマになる体験をしたのですが、これはブログに書いていいことなのかどうなのか・・・)・宗之助さん、壱太郎さん、華やかでうきうきと心浮き立つ可愛らしさ。特に壱太郎さん、ピシッと筋が通った美しい姿勢、と同時にどこ触ってもふわふわくにゃくにゃに柔らかそうな不思議な質感。実際、日本舞踊で鍛えた身体はふやふやと柔らかいわけではないと思うけど(笑)。

 さて、この後、獅子の精の登場となるわけだけども、三階席からの観劇だった上に昼の部の宙乗りで使う鳥屋が視界の妨げになって花道がちっとも見えなかったのは残念だった。も少し花道が見える席で観たいなぁ〜。もういっかい観に行こうかなぁ〜。
posted by sweet_pea at 21:54| Comment(0) | 歌舞伎観劇の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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