きっと多くの読者がそうであるように、恒川光太郎氏の描く幻想的な異界の有り様には「厳しさ」「怖ろしさ」とともに「懐かしさ」を感じてきた一人なんだけども、今回感じたのは「懐かしさ」を通り越して「それ、知ってる」っていう感覚だった。
夏の夜に音もなく山々をよぎる大入道。町の上空に浮かぶ巨大な船。重なり合った布団の中からするりと抜け出ていくもの。
「それ、私も見たことあるわ」っていう感覚。「夢だったんだろう」ということにしているぼんやりした昔の記憶の中から浮かんでくる古いフィルムに写ったような映像。
「怖さ」ということでは「傀儡の路地」が一番だった。「ドールジェンヌ」は超自然の存在かもしれんけど、割と遭遇するからね。

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