ずいぶん前に見かけてタイトルが印象に残っていた本。古本で手に入れた。
自覚症状が一切ないままに筋肉や内臓の一部が機械になってしまう『機械化病』。痛みも、違和感も、健康上の害も無いが、原因は解明されておらず治療法も無い。
この奇妙な病が発見されて約10年。何の打つ手も無いままに病が蔓延する状況に人々が慣れつつある世の中。
別れた恋人の死とその恋人が全身機械化していたことを知らされた青年、息子のクラスメイトの連続自殺と囁かれる機械化の噂、足が機械化してしまった短距離ランナー、機械化病ゆえに死ねない女性、機械化を怖れるアイドル 〜「機械化病」が姿を現す現場で起こる出来事を描く連作。
・・・例えば、ふと気づくと随分スマホに依存するようになっちゃってる・・・こういうのも人間の存在が一部『機械化』したってことなんじゃないかと思っていた。私たちはもう『機械化病』を患っているんだよと。
でも、この小説で描かれているのは、そういう外部的な形での『機械化』ではなくて、もっと内部的なものだった。多分、力点は『機械化』ではなく『気づかないうちに変わってる』っていう方に置かれているのだ。
『走っていない時は、余所の家の台所にいるように感じる。』
機械化した足でなおも走りづるけるランナーの言葉。生きる上で感じる名前をつけがたい違和感。それに何とか名前をつけるとしたら「余所の家の台所」ということになるのだろう。この名づけがたさが何とも生々しい。
名づけられないが故に見えなくなりかけていた居心地の悪さの名前を探す。そんな小説だった。
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