2025年11月05日

百年の子 : 古内一絵

『百年の子』 古内一絵

 創業百年を迎える老舗出版社文林館を舞台に、戦中・戦後から高度経済成長期、子どもたちの学びの為の学年誌の出版に携わった人たちの苦闘と、社の「学年誌創刊百年企画チーム」への異動を期に、その学年誌出版の歴史に目を向けることになった女性編集者の姿が令和〜昭和の時代を行き来して描かれる。

 女性ファッション誌の編集部から「学年誌創刊百年企画チーム」への意に添わない異動を命じられた市橋明日花。やり場のない不満をくすぶらせていた明日花だが、希望とは違う編集部でも前向きに働く同期の言葉に背を押され、改めて今の仕事と向き合う気持ちを固める。そんなとき太平洋戦争中の入社者名簿に、仕事で忙しい母に代わって自分を慈しみ深く育ててくれた祖母の名前を見つけ・・・。

 現代を生きる一人の女性に寄り添っていた視線は、やがて、女性や子供の人権意識がまだ低かった時代に、子どもたちが自ら学び自由に伸びていく助けとなるようにとの想いをこめて学年誌や児童文学の編集、出版に携わった人たちの物語へと導かれていく。

 学年誌出版の現場をのみこんでいく戦争の波。苦難の時代の物語だけれども、明瞭な語り口、鮮やかな風景、生き生きとした表情を見せる人物たちに引き込まれて次へ次へとページを捲っていく。理想を掲げ、希望を抱き、情熱をもって、大きな後悔と失敗の中から立ち上がって進み、つながっていく人たちの美しさに溢れた物語であると同時に、職場、家庭、男女間、女性同士、家族、世代間・・・様々な場所に横たわる格差、分断、無理解の有り様もそこには刻みつけられている。

 理解したからといって、全ての問題が丸く収まるわけではない。それでも、学ぶこと、考えることを諦めずに続けていった先に見えるかもしれないものをやわらかな言葉で指し示してくれる。わくわくと読むうちに、いつしか固くこわばった大人の心を優しく耕し、気づきの種を蒔いてくれる・・・これは、私たちのための『児童文学』なのかもしれない。

本・書籍ランキング
本・書籍ランキング
posted by sweet_pea at 21:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年05月28日

ラジオ・ガガガ : 原田ひ香

『ラジオ・ガガガ』 原田ひ香

 深夜ラジオって何であんなに刺さるのか? いや、刺さるんじゃなくて・・・自分の中のもやもやした形も正体もわからないものをやわやわと暴き出し、何であんなにもぴったりと埋めてくれるのか?

 私は特に熱心なラジオリスナーではないけれど、10代の半ばから20代の初め頃、深夜ラジオを聴いていた時間は今も私の人生の特別な場所を占めている。灯りを消した部屋で少しの眠気と闘いながら、ラジオから聞こえてくる声を自分の中に取り込む。暗い部屋のなかで青白く光るラジオ(コンポ)のディスプレイ。思い出すとセンチメンタルが押し寄せてくる。


 広島ドラゴンフライズ・寺嶋良選手の『読学人間』の中で紹介されていた本。ご自身も『オードリーのオールナイトニッポン』の熱心なリスナーだという寺嶋選手の言葉に背中を押されて手に取った。

 人生の大切な時間を、人生を運命づけるひと時を、ラジオとともに過ごした人たちのお話し。

本・書籍ランキング
本・書籍ランキング
posted by sweet_pea at 21:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月22日

睦家四姉妹図 : 藤谷治

『睦家四姉妹図』 藤谷治

 横浜市戸塚区の静かな住宅地・原宿に暮らす睦家の家族。父・昭、母・八重子と貞子、夏子、陽子、恵美里の四姉妹。昭和の終わりから令和の幕開けまで。それなりの波風を立てながら「平成」の日々を暮らす一家の家族模様。

 睦家の四姉妹とはほぼ同世代。家庭環境の違いはあるけれども、私も彼女たちと同じ年ごろで同じ出来事を経験している。

 「あの頃の空気」「あの場所で話した言葉」「あの時の気持ち」に思いをやる。いつの間にか過ぎ去っていた「平成の日々」を思う時間をくれた読書だった。

本・書籍ランキング
本・書籍ランキング
posted by sweet_pea at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月24日

実朝の首 : 葉室麟

『実朝の首』 葉室麟

 宇月原晴明『安徳天皇漂海記』を読んで「実朝ォォォォォォ〜!!!」と号泣したあの日から、鎌倉三代将軍源実朝は「なんかもう・・・たまらん人」として私の胸に棲みついてしまった。

 読みたい本リストに長らく入ったままだったこの『実朝の首』、読むなら今をおいてないでしょうと手に取ったのだけど、ちょうどこの小説の前段にさしかかった大河ドラマ「鎌倉殿」の先週からの流れがあまりに辛い。運命の歯車ってこんなに残酷に回るのか! 鎌倉が真っ黒だ。ああ、和田殿! 実朝様を独りにしないでぇぇぇぇぇ〜


 雪の鶴岡八幡宮。石段にさしかかった将軍・実朝を頼家の遺児・公暁が襲う。公暁から託された実朝の首を抱えて走る弥源太。公暁とは別の意図で実朝の首を利用することを考えていた弥源太だが、その首を何者かに奪われ・・・ 

 鎌倉、朝廷、源氏の血を継ぐもの、弥源太から首を奪った一派 〜 実朝の首の所在と将軍の座をめぐって幾重にもからむ陰謀。権力の腐臭と我欲にまみれた闘争が陰湿に繰り広げられる中、実朝の首を護る一派〜己の義に従い権力に逆らう好漢が寡勢ながらに鎌倉を掻き回し、北条や三浦を翻弄する様に胸がすく。

 そして終盤に明かされる実朝の真の想い。『安徳天皇漂海記』で自らの首を以て安徳帝の荒ぶる魂を鎮めんとしたのと同じように、力を持たぬ孤独な将軍・実朝は首となることで苦しみの中にある、ある方の心を安んじようとしたのだ。嗚呼! その哀しく健気な将軍の姿を想うにつけ、実朝に心を寄せる者の手で、その首が護られたことはせめても慰め。


『安徳天皇漂海記』感想・・・http://bitter-sweet-pea.seesaa.net/article/388358937.html

 


本・書籍 ブログランキングへ
ラベル:源実朝
posted by sweet_pea at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月05日

常設展示室 : 原田マハ

『常設展示室』 原田マハ

 どんなに大切に思っても指の間からすり抜けていくもの。別れ。自分自身という存在も含めて、時とともに揺蕩い、移ろいゆくもの。生きているものの宿命としてそれらを噛みしめる時、ふと心に触れる一枚の絵。時の流れに洗われながら、あるいは超然と、あるいは人の想いに長く寄り添い、変わらずそこに在り続けるもの。

 mortalな人の生と、それを見守るimmortalな絵画、その邂逅を描く6つの短編。





本・書籍 ブログランキングへ
posted by sweet_pea at 20:41| Comment(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月01日

夏への扉 : ロバート・A・ハインライン

『夏への扉』 ロバート・A・ハインライン

 だめだった。

 StayHomeは苦にならない、コロナ禍で生活が大きく変わったわけでもない私でも、人生における大きな楽しみである生のお芝居はいつ観られるともわからない、その上にマスクを着けたまま梅雨突入で、時には気分が滅入ってしまうこともある。こんな時、少しは明るい気持ちになれるかと、『希望にみちあふれた未来予想図』と謳われ、名作の呼び声も高いこの作品を読んでみたのだが・・・。晴れ晴れとした気持ちになるどころか、もやっとする不機嫌を抱え込むことになってしまった。

 とにかく主人公である゛ぼく”=ダンに始終神経を逆なでされ続けてしまったのだ。

 他人の気持ちや思惑に疎くて、自分の言い分が容れられないとすぐにイラ立ち、独善的に振る舞う。悪い出来事は全部他人の所為。割と平気で嘘を吐き、人を欺くくせに、他人の好意や善意は当然のようにすんなり受け取る。

 そんなダンがいつ自分の至らなさに気付き、その独りよがりな生き方を改めるのかと思って読み進めたが、コールドスリープで一息に三十年先の世界を知っても、時間旅行でその三十年間を巻き戻しても、彼は最後までそういう人であった。

 彼が手に入れた゛幸せ“が本当の幸せなのか? とも思ってしまう。ただ、自分の思い通りになるものだけで身の回りを囲んだっていうことじゃないの?


 それでも、「名作」という評判に敬意をはらって、私を不機嫌にさせた彼の言動を精一杯良い方にとるとすれば・・・ダンは本来的な人間の善良さ、世界の素晴らしさを信じている、それに期待している人なんだな・・・と思うこともできる(だからそうではない現実と折り合えない)。




本・書籍 ブログランキングへ
posted by sweet_pea at 23:17| Comment(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月11日

十蘭万華鏡 : 久生十蘭

『十蘭万華鏡』 久生十蘭

 久生十蘭初読み。

 欧州の街を舞台にした冒頭2篇を読んだところで、そに漂う躁的とも感じる高揚感は、渡辺温の作品に感じた都市の気分と似通っている気がして、「・・・時代、なのかなぁ・・・」と思う。

 ただ、渡辺温の小説には、都市の光と共にある闇や陰鬱さを描く暗いトーンがあったのだけど、十蘭の方は情愛、悲しみ、奇妙、不可解、滑稽、恐怖・・・何を書くにしても、ずっと目を見開きっぱなしでいるような異様なハイテンションと緊張感が続いていて、いったい何が起きているのか・・・と眩暈がしてくる。そして、ぐるぐると目を回している私を振り落として語りは終わる。


渡辺温『アンドロギュノスの裔』感想・・・http://bitter-sweet-pea.seesaa.net/article/388359490.html


 


本・書籍 ブログランキングへ
posted by sweet_pea at 22:52| Comment(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月08日

星を継ぐもの : ジェイムズ・P・ホーガン

『星を継ぐもの』 ジェイムズ・P・ホーガン

 人類の目の前に現れた巨大な謎を科学的な手法、思考で解明していく理知的なストーリーでありながら、読み終えての全体的な印象は「夢見るような物語」だった。

 月面で発見された宇宙服を身に着けた死体。どの月面基地にも該当者のいない正体不明の死体は「チャーリー」と名付けられ調査が開始されるが、そこから導き出されたのは「チャーリー」の死亡時期が5万年前であるという驚愕の事実だった。

 現人類にそっくりの身体と、現人類より進歩した科学技術を持つ「チャーリー」は何者なのか? その発生、進化の過程は? 彼らが築いたであろう文明の痕跡は? 生物学、物理学、数学、言語学・・・さまざまな分野の専門家、技術者が召集され「チャーリー」をめぐる一大プロジェクトが立ち上がる。

 目の前の解明されていない現象に対して、仮説をたて、データを集め、検証し、矛盾なく現象を説明できる答えを探す科学者たち。空白のパズルにひとつずつピースが配置されていく様を見ていると、あたかも自分も「チャーリー」の存在する世界に踏み込んでしまったかのような、フィクションが現実と地続きになる瞬間がある。

 謎の解明はあくまでも科学的な思考と検証によって進められるが、挿入される「チャーリー」の手記の記述や、プロジェクトのまとめ役である主人公ヴィクター・ハントが幻視するヴィジョン、物語ラストでガラクタとして打ち捨てられる「あるもの」は生々しく私たちの視覚を刺激し、感情をゆさぶる。

 最後のピースが置かれたとき、そこに描かれていたのは人類と遠く時空を隔てた生命とをつなぐ壮大なロマンだった。 


 

本・書籍 ブログランキングへ
posted by sweet_pea at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月27日

虎よ、虎よ! : アルフレッド・ベスター

『虎よ、虎よ!』 アルフレッド・ベスター

 遭難した宇宙船の残骸にただ一人残され6か月の漂流生活を生き延びた男は、自分が見棄てられたと知ったとき、恐るべき復讐鬼となって地球に舞い戻る。

 人類がジョウントと呼ばれるテレポーテーション能力を身につけ、内惑星連合と外衛星同盟が抗争をくりひろげる宇宙を舞台に、「不死身かっ?!」といいいたくなるような超人的な力と執念を滾らせた主人公・フォイルが、軍諜報部や大財閥の総帥ら世界を動かす実力者たちを相手に復讐街道を驀進する。

 「いや、もう何か逆に目的見失っていませんか?」とツッコみたくなるほど破綻ギリギリで激情的で破壊の度がすぎるフォイルの行動と、暴走気味に溢れ出すストーリーの熱量に「あぁ、しんど・・・」と思いながら読み進めていたのだが、復讐と破壊のためにバルブ壊れ気味に放出されつづけたエネルギーは、物語終盤において人類を覚醒させ、世界に新たな局面をもたらす爆発的な力へと一気に収束していく。

 物語中盤まで無茶苦茶に暴れまわっていた主人公とストーリーが、気がつくと何だか啓蒙的なラストへとなだれ込んでいたのにはちょっと面喰ったが、何といっても、ただただ、その熱量の物凄さに圧倒される作品だった。




本・書籍 ブログランキングへ
posted by sweet_pea at 22:12| Comment(2) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月26日

あなたのための物語 : 長谷敏司

『あなたのための物語』 長谷敏司

 不満足な現実に甘んじることを拒みタフに戦い続け、幾何かの成果を出してきた研究者サマンサ。余命半年を告げられた彼女は、死病にとりつかれた自らの肉体という現実に挑み、抗い、抗いきれずに悶え苦しむ。「納得のいかない現実」をあくまでも抵抗すべきものと考えるサマンサの戦いと苦悶が執拗に描かれ続ける。

 以前観た映画『禅−ZEN』の感想にも書いたのだけど、「ああなりたい」「こうありたい」と願い、現実をより良いものにしようと努力することは人間の美しい心のありようであり、輝かしい姿ではあるけれども、その願いに囚われて「自分の思ったようなものでない現実」を拒絶することしかできないというのは人の心の暗黒面でもある。

 ・・・そのように私には思われるから、自分の満足いかないものには徹底的に抗い、打ち負かそうとするサマンサの姿には反発しか感じなかった。

 ・・・しかし、欲を捨て、抵抗することをあきらめ、現実をありのままに受け入れることは、上手く死ぬための方法であって、「よく生きる」ということではない・・・とは思う(同時に「人間ってよく生きなきゃいけないのか?とも思う。)。
 


本・書籍 ブログランキングへ
posted by sweet_pea at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月19日

父のおすすめ本

『蜩ノ記』 葉室麟

 父のおすすめ本・・・と言っても、はっきりと言葉にして勧められたわけではない。帰省した折に朝の食卓につくと、整えられた朝食の横にただ黙ってこの本が置かれていたというのは、口数の少ない父なりのコミュニケーション 〜 「悪くなかったから読んでみなさい」ということなのだろう。

 豊後・羽根藩。藩主側室との密通の疑いで、十年後の切腹とその間の家譜編纂を命じられ幽閉の身となっている戸田秋谷。切腹の期日が三年後に迫った秋谷のもとに一人の若い武士・檀野庄三郎が遣わされる。城中で刃傷沙汰を起こし切腹となるところを、助命と引き換えに秋谷の監視と身辺探索を命じられた庄三郎であったが・・・。

 秋谷は正しい。逆境にあってもその思い、生き方は強く真っ直ぐで、謂れのない死を前にしてもまったくぶれることなく自分に恥じることのない生き様を貫いた秋谷の姿は凛として清々しい。

 どんな困難の中にあっても折れることのない秋谷の正しさ、清廉な生き様は、周囲の人々の行く末と日々の暮らしを照らす光となるのだろう。しかし一方で、一歩も引くことのない秋谷の正しさに追い詰められた人々がいたこと、その苦く、辛い心情を思うと、「正しい」ことはそんなに美しく、素晴らしいことだろうか・・・と遣る瀬無い気持ちにもなる。

 秋谷の命の期限が切られていることで、「どう生きるのか」という問題がクローズアップされた小説だったが、私たちも皆、「いつか死ぬ」という意味では命の期限が切られているのだよな・・・なんてことも思わされるのだった。





本・書籍 ブログランキングへ
posted by sweet_pea at 00:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月05日

芳一 : 堀川アサコ

『芳一』 堀川アサコ

 歴史ミステリー? 歴史ファンタジー? 時代が室町初期っていうのがめずらしくて面白いなと思った。

 足利将軍尊氏の嫡子・義詮と冷遇されてきたその異母兄・直冬。二人の確執に、この世に災禍をもたらす祟りの書『北条文書』をめぐる怨念が絡まって、亡霊や怪しのものまで暗躍して繰り広げられる血なまぐさい騒動。そんな命懸けの騒動に巻き込まれては、心ならずも事態収拾のために一はたらきしてしまう無頼の琵琶法師・芳一。

 主役も脇役も、登場人物たちが皆あっけらかんと暴力的で、けっこう無惨な流血沙汰も何か楽しげにじゃれあっているように見える。そういう明るくて素朴なワイルドさとかバイタリティって何か中世的かな・・・と思う。

 琵琶を弾いて語れば亡霊を呼ぶ芳一は小柄で猿顔、身が軽く、口の悪いがさつ者。茫洋として腹の底が読めないけれどかなりしたたかであるらしい義詮は「お願い」と「脅し」で芳一を猿まわしの猿のごとくに追い立てる。義詮や芳一を陥れいたぶる直冬や、『北条文書』にまつわる怨念のかたまりである永久男に清斗も邪悪なんだか、そうでもないのか・・・ひどいことをしても独特の愛嬌があって憎めない。

 面白いキャラクターたちだと思うのだけど、エンターテインメント小説としてはいまひとつ輪郭がはっきりしない。どんな目で、どんな眉で、鼻筋はどんなで、どんな口で、何を着て、どんな表情をして、どんな癖があって、どういう行動原理を持っているのか・・・そういうことが、もっとありありと目に見えるようだと、さらに話にのめりこめるのに。 

 キャラクターの輪郭が何だかはっきりしないと感じてしまう訳の一つは、キャラクターに名前がしっくり添っていないからかもしれない。「芳一」という名前からは主人公の芳一とはまったくキャラクターの違う「耳なし芳一」を強くイメージしてしまうし、怪しい傀儡師として名無しのまま印象深く登場していた男に、物語中盤でおもむろに「清斗(=清めねばならぬ悪しき器)」だと名乗られてもなぁ・・・。
 






本・書籍 ブログランキングへ
posted by sweet_pea at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月14日

ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50 : 福田里香 オノ・ナツメ挿画

『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』 福田里香 オノ・ナツメ挿画

 とにかく、オノ・ナツメさんの描く表紙が目に飛び込んできた。

 「数多くの物語の中で、慣用句のように繰り返され、多くの人に判で押したように同じ印象が浸透しているフード表現」=「ステレオタイプフード」50例についてさまざまに語ったエッセイ集。

 この本、各章のタイトルとそこに添えられたオノ・ナツメさんのイラストだけでほぼ完結してるんじゃなかろうか? タイトルを目にするだけで、そういう食べ物にまつわるステレオタイプなシーンの記憶やイメージは次々と溢れてくるし、オノ・ナツメさんのイラストはそんなイメージや記憶をスタイリッシュに彩って、高揚感を与えてくれる。

 ところが、各章の内容を読んでいくほど、その鮮やかな印象がぼやけてくるのだ。広がるでも、深まるでも、新たな視点を与えられるでもなく、ぼやける。なんでそうなるかっていうと、多分、著者が例として挙げる「ステレオタイプフード」が登場する場面や、その場面に続く展開が、ほんの少し、ホントにわずかに私の頭に沸いてくるイメージや記憶とずれているから。

 例えば、第46章「事件についうっかり目を奪われると、食べこぼす」で列挙される「目を奪われる事件」の例の中に「目の前に現れる宇宙人」「派手に喧嘩するカップル」「世にも珍しい動物」「テレビで流れる予想外の仰天ニュース」があるのに、「とびきりの美人が通り過ぎる」がないのは私としては納得できない。(ちなみに「派手に喧嘩するカップル」に目を奪われて食べこぼすというシーンの記憶は私の中にはない。)「美人」云々については実は次の第47章「美人についうっかりみとれると、調味料をかけすぎる」でとりあげられているのだが、う〜ん、やっぱり・・・何か微妙にズレるんである。

 著者は「それが登場する具体的な作品名や前後の場面を明確に思いだすことはできないが、確かに過去に何度も見たという記憶があるフードシーン」を「ステレオタイプフード」と呼んで、具体的な作品名や場面を提示することなく、ただ多くの人の共感をたよりに語っているわけだから、著者との間に共感が薄いと印象がぼやけてしまうのは仕方がない。

 私がもっとも飲み込みづらい違和感を感じたのは、第7章「賄賂は、菓子折りの中に忍ばせる」で、「甘いお菓子」のアイコン性について「かわいくて、たわいなく人畜無害なもの」と「誘惑、欲望、快楽、陶酔」という二つの面を示し、後者の例として章タイトルでもある「賄賂を忍ばせた菓子折り」を挙げていること。

 それはちょっと違う。この場面において、「誘惑、欲望、快楽」を表しているのはやはり「賄賂=小判」そのものであって、「菓子」の役どころはそれを包み隠す「善良で穏当なもの」である。小判を指す隠語「山吹色の菓子」についてもしかり。

 「菓子」そのものを「誘惑、欲望、快楽、陶酔」を表すものとして登場させるなら・・・たとえば、口のまわりを真っ赤にしてチェリーパイを頬張る少女とか、美女が思わせぶりな目つきで口にするクリームたっぷりのケーキとか色鮮やかなフルーツとか・・・第24章「お菓子と果実はエロスのメタファーとして食べられる」で挙げられているようなことだと思うんだけど?






本・書籍 ブログランキングへ
posted by sweet_pea at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月27日

TOKUGAWA 15 : 堀口茉純

『TOKUGAWA 15 徳川将軍15人の歴史がDEEPにわかる本』 堀口茉純

 「吉宗の後の何代かって、名前忘れがちだよねぇ〜」とは思ってたんだけど、名前聞いても思い出せない人がいた。『家重』・・・? え?・・・いた?

 「私、徳川将軍大好きなんです。でね、でね・・・聞いて♪」って、「私の好きな『徳川将軍』」よりも、「徳川将軍が好きな『私』」の方がぐいぐい前に出てくる感じに、最初はちょっと「うわぁ…」とか思ったけど、慣れてくると面白く読めました。

 「家」を存続させるって大変なのね。ホントに『必死にたすきをつないだ265年』って感じ。その歴史の中で、七代将軍の座についた家継のいとけなさに泣かされ、四代「左様せい様」・一二代「そうせい公」の胸の内を思い、一四代家茂の健気さ、数々の「いい人伝説」にまた涙し・・・。いろいろあった徳川15代の歴史・・・「オレ以外に、誰がやれたよ。」の台詞を配した暗闇に浮かぶクールすぎる慶喜のイラストで見事に締めましたね。

 あとがきの「お気に入りの将軍様は見つかりましたか?」っていう問いかけには、「家重」って答えちゃった。いや、好きとか、お気に入りとかいう訳じゃなく、気になるっていうか・・・。もう忘れないよ、九代将軍家重。・・・多分。




人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 22:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月15日

詭弁学派、四ツ谷先輩の怪談 : 古舘春一

『詭弁学派、四ツ谷先輩の怪談』 古舘春一

 これは、「10代の暗黒」の物語だなぁ・・・。


 “怪談噺と引き換えに、怪奇事件を解決する”四ツ谷先輩 〜 タイトルの「詭弁学派」にくいついたモンとしては、複雑怪奇な事件を解明、解体する四ツ谷先輩の「詭弁」に期待が高まっていたんだけど、彼の語りは詭弁というより、あくまで正統な「怪談」。怪談を愛するあまり言動がおかしなとこはあるけれども。

 事件の犯人はあっさりと名指しされているし、解決の過程を眼目にしたものでもなさそうだし・・・サスペンスとしてはちょっと拍子抜け。幼女連続殺人に監禁事件、バラバラ殺人・・・起きてる事件の重大さ陰惨さの割に、外の社会の描写は少なく、語りは常に学校内で行われる。ああ、これは「学校の怪談」なんだな。四ツ谷先輩は事件の真相を明かすのではなく、事件に関わる人の心の中の暗黒を「怪談」としてひきずり出す。

 学校という場で語られる様々な怪談。物語として形を与えられた暗黒。“幻の生徒”として留まり続けた中学に、7つの怪談ともう一つ「四ツ谷先輩」という物語を残して、本当の幻になった四ツ谷先輩・・・読み終えて、なぜか妙なノスタルジーに胸がしくしくしちゃったよ。


 本編終了の後に、はじまりの物語〜四ツ谷先輩が“幻の生徒”になるまでのお話しが付されているのも、構成的に何かニクイ。




人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月12日

ちくま日本文学36 萩原朔太郎

『ちくま日本文学36 萩原朔太郎』

 国語の副教材として与えられていた中央図書の『新編国語便覧』は今でも手元にあって、たまにぱらぱらと眺めたりしている。学生時代はこの便覧の中から気になる作家やタイトルを見つけては読了したものにマーカーで印をつけるのを楽しみにしていたのだが、今見ると印のついてる作品が少なくて笑ってしまう。

 学生時代、やはりこの便覧の中で目にした『月に吠える』『青猫』というタイトルにはただならぬものを感じて震えたのだけど、学校の授業では朔太郎の詩を読む機会はなく、その後も詩集というと何だか敷居が高くって読まぬままきてしまった。

 で、今になって読んでみた朔太郎の印象は、“饒舌な激情家”。

 
 自然の生命力とでもいうようなもの〜あるいは野性的な力強さでぐんぐん萌え耀き、あるいは衰え萎み腐臭を放つその生命力を、いじらしく愛しいものと感じる一方で、その旺盛さを個の意志を飲み込むものとして恐れ、嫌悪し、しかしまた、その限りないやさしさ、安堵を与える温かさに誘惑され欲望を感じながら、自分がそこから疎外されていることに苦しみ、悩む。

 私が根かぎり精かぎり叫ぶ声を、多くの人は空耳にしかきいてくれない。

 自分の言ふ言葉の意味が、他人に解らないということはどんなに悲しいことであるか。
 「言はなければならない事」

 自己矛盾の苦しみや、どこにも“自分の言葉が通じる場所”〜安住の地を見つけ得ない孤独の為に、彼は異様なまでに饒舌に沢山の言葉を語るが、その饒舌さは彼の言葉を聞かない人たちに向けて逆立てられたハリネズミの針のようで、耳を傾けようとしても針が刺さって痛い。また、妻や老母や馴染みの女達に身の回りの世話をやいてもらってるあたり、“孤独を問題にするんなら、自分の孤独くらい自分で守れよなぁ・・・”と思わないでもない。あ〜 何か、いつまでも心が中2の人・・・だったのか? 彼は。

 正直に言って、ここに収められた詩や散文に良い印象は持てなかったのだが、
私が『表現の秘訣』を握ったあかつきには、私は私の芸術を捨てることを躊躇しない。なんとなればそれ以上の芸術はどんな人にとっても必要以上のぜいたくである。
 「言はなければならない事」

 という、この言葉があるせいで、彼の言うこと全てを“OK!”としてしまいたいような気もする。彼が寂しかったこと、自分の言葉が通じて欲しいと思っていたことは本当なんだものな・・・。

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月02日

伊東忠太動物園 : 藤森照信・増田彰久・伊東忠太

『伊東忠太動物園』 藤森照信 編/文・増田彰久 写真・伊藤忠太 絵/文

 学生時代、何度か一橋大学の兼松講堂に入ったことがある。ほぼ1日中を講堂内で過ごし、最初は何も感じなかったのだけど、ある時、建物内の階段で、ふと視界の隅に変な鳥がいる気がして“ギョッ”と振り返った。細部はもうかなり曖昧で、私の中で半ば以上ファンタジー化してしまっている記憶なのだが、あの“ギョッ”は忘れられない。それが、伊東忠太の怪物との出会いだった。

 一度気付いてみると、兼松講堂のあちこちには奇怪な姿の動物がとり付いている。“うぁっ クリーチャー! クリーチャーがおる。兼松講堂、スゲぇっ”・・・身近にこんな異次元があったことに、ふるふると異様な悦びと興奮を覚えてしまった。

 その後、兼松講堂やその怪物たちが伊東忠太の設計によるものだと知って(自分で調べた覚えは無く、どういう経緯で伊東忠太のことを知ったのか、我ながら謎なのだが)、歌舞伎見物に上京した折に、築地本願寺へも怪物探しに行ったのだけれど、その寺院としてはあまりに風変わりな姿にも、そこに棲む動物や幻獣にも、兼松講堂で感じたほどの衝撃と悦びは無かった。

 やはり“怪”には、無防備な日常の中で遭遇してこそ・・・。

 
 ところで、伊東忠太の怪物の写真を多数収めたこの『伊東忠太動物園』〜著者の語り口が妙に可笑しい。靖国神社境内の遊就館について、伊東忠太が直接設計をしたものでない可能性を指摘しての言葉。
 そのせいか、伊東ならではの図像が見られないし、また、鬼面がついてはいるものの、こうしたこれ見よがせは彼の好みではないし、鬼面のタッチも伊東好みとはいいがたい。伊東はもっとクリクリモコモコした形が好きなのである。

 大の大人の発言にしては、妙に幼児的というか駄々っ子的というか(笑)。妄想家・伊東忠太に著者自身も多くの妄想を託している・・・というか、“この人は、伊東忠太を見ているとワクワクしてたまんないんだろうな”と思わせるフシが言葉の端々に見えて何だか可笑しい。

人気blogランキングへ
ラベル:伊東忠太
posted by sweet_pea at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月27日

若様組まいる : 畠中恵

『若様組まいる』 畠中恵

 『アイスクリン強し』のちょっと前にあたるお話。

 どうも、「若様」という言葉につられてしまう(苦笑)。まぁ結局、私にとってはこの若様たちの育ちの良さ(だけ?)がこのシリーズの魅力なんだけど。

 元幕臣の子息にとってはままならない明治の世。苦労を覚悟で巡査になる決意をした「若様」たちの奮闘。不正の匂いもプンプンの不利な採用試験を突破して、二ヶ月間の教習所生活に入った若様たち。

 若様たち、薩摩方の氏族、維新後も徳川家に付き従った者、平民たち入り混じっての寄宿舎生活。一癖ある教官たち、謎の発砲事件。反目し、競い合い、時に和解し、困難を通じて育まれる友情。ほろ苦く、甘じょっぱい青春物語。

 しかし、若様たち・・・洋々と拓けているわけではない己の境遇ゆえ、また頼ってくる家人たちの為、悲壮な覚悟を固めて巡査を目指した割には、教習所にはご法度の酒を持ち込んで酔っ払っているようでは、その覚悟の程が怪しまれるのだけど。



人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月24日

アイスクリン強し : 畠中恵

『アイスクリン強し』 畠中恵

 明治半ば。居留地育ちの西洋菓子店「風琴屋」店主・皆川真次郎とその友人〜元旗本の若様で「若様組」を名乗る巡査たちに差出人不明の手紙が届く。『差出人が誰であるかを推測し、その一番に欲するものを持参せよ。』 手紙の到着と相前後して、様々な騒動が、真次郎と「若様組」の面々を襲う。

 ストーリーにはどこを目指しているのかわからない、何だかうまくスカされたようなモヤッと感というか、フワッと感が漂うのだが、真次郎や「若様組」の面々の爽やかでしたたかな漢ぶりの良さで何とか読める。(いや、キャラクターの良さというよりも、「若様組」というネーミングの良さで読んだ・・・と言えるかも。)

 ところで、真次郎や「若様組」の長瀬がよく見せる、口元をかすかに歪めたり、片眉や口の端をくいっと上げる表情は、女子には(一部の?)かなり魅力的なんだけども、あまり安売りすると価値が下がりますよ。

 ああ、それから・・・もひとつ残念なのは、お菓子が印象に残らないってことかなぁ。西洋菓子屋が主人公で、各章のタイトルにはお菓子の名前がつけられてるのというのに・・・“お、お、お、美味しそ〜”と思わせる描写がない。ああ、香り良く、甘〜い、文明開化の魅惑の西洋菓子をもっと堪能したい。

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 00:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月06日

城のなかの人 : 星新一

『城のなかの人』 星新一

 太閤の遺児・秀頼を「城のなかの人」と見た作者の目に感動する。

 世の中の富をすべて我が物にした太閤の待望の若君と、世に二つと無い豪奢な城。その二者の特権的かつ完全な調和の絢爛たる美しさ。愛するものと一体になる幸せな充足の内に、城の外の世界と少しずつずれ続ける哀しさ。

 「城のなかの人」という言葉に凝縮されたイメージが、想いが静かに広がっていく。


 その他、才覚を持った者達の、才能に見合った成功と、その皮肉な結末を淡々と描く歴史小説。

 幕臣小栗上野介の功績と、彼の目から維新を語る「はんぱもの維新」は、薩長や竜馬の維新に凝った頭をいい感じに揉み解してくれる。その揉まれ具合が絶妙に気持ちいい。



人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月30日

厭犬伝 : 弘也英明

「厭犬伝」 弘也英明

ここは魑魅魍魎が跳梁跋扈する異世界。人間の骸から生えた「汚木(よごれぎ)」を基に操り人形の「仏」を作り、仏同士を戦わせる「合(あわせ)」という風習がある。美貌の主人公・厭太郎は、ひょんなことから仏師の娘の犬千代と、命懸けの「合」を戦うはめに。負け続けだった厭太郎だが、幼馴染の美妓・笹乃や、合の達人・鵜市らの助けを借りて修練を積み、いよいよ最後の戦いに挑む―。


 嫌な予感はしていたのだけど、何だか雰囲気のあるタイトルに押される形で読んだら・・・やっぱりハズレだった。(タイトルも主人公・厭太郎と対戦相手・犬千代の名前からとっただけか?)

 エンターテイメント小説の姿をした教育的読み物なんだか、それとも、ちょっとおどろおどろしい「努力・友情・勝利」なのか・・・それも中途半端な。

 諦めの中で他人を当てにせず、その場限りに生きていた厭太郎が、降りかかってきた大きな戦いを前に仲間を得、他人と繋がることで成長し、覚醒する・・・ってな話の割りには、『俺ですらわからない俺の中にある力に賭けてみる、それしかない。』なんて甘さを平気で残してたりするんだなぁ。

 東都の世界観は割りとしっかり作り込まれているものの、肝心の人物たちにストーリーにのめり込ませるほどの立体感・存在感がない。なんだか、キャラクター設定集は別にあります〜って感じ。

 もってまわった言葉遣いや、虚仮威しかと言いたくなるほどの仰々しい修飾も、東都という世界の雰囲気づくりのためだろうけども、あまり効果的でないというか、逆にストーリーの運びに水をさしてるというか・・・。

 好みの問題でもあるだろうけど、あまり楽しめなかった。

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月08日

赤壁の宴 : 藤水名子

「赤壁の宴」 藤水名子

 いつも楽しく読ませていただいてるブログ、『微萌★読書記録』サマで目にして以来(記事はこちら)、ちょこっと気になってたこのお話、『レッド・クリフPartU』公開間近の今、読んでみました!

 孫策のことが好きで好きで大好きで、妄想が膨らむばかりの周瑜。のっけから、孫策様への欲望で一人もんもんとしています。

 冷たく冴えた、女と見紛う美貌の周郎(という設定ですが、個人的には、周郎の美しさは漢っぽくて美丈夫って類のものであって欲しいなぁ。)に熱い目で見つめられる孫策も、まんざらではないようで、妖しい気持ちになりながらきわどい意地悪をしたりします。

 しかし・・・屈折した想いを抱えて、欲望に正直になれるはずも無い周瑜。心にもない言葉なら、いくらでも、綺麗な微笑とともに口にできても、本心を決して語ることができない男の内省的なドラマ・・・と言えなくもないけど・・・。激しい権力闘争の時代に、曹操に対抗し得る唯一の勢力・呉の将軍でありながら、ただもう己の煩悩を持て余して、「俺のこの気持ち、どうすりゃいいの?!」的、非生産的な自問自答を延々と繰り返されりゃ、こっちも終いに「知らんがな!!!」と突き放したくもなるってもんです。

 「孫策殿以外には全く興味ナシ」な周瑜なので、孫権なんてハナもひっかけてもらえない。呉の一大イベント「赤壁の戦い」も、孫策殿への想いを昇華させるための、周瑜の心理的なセレモニーとして描かれていて、バトル的には一向に盛り上がりません。

 ただ、とってもツボだったのが、赤壁の戦い前にした、孔明・劉備と周瑜の対面シーン。孔明=「腐れ外道」、劉備=「戦場ゴロ」「うだつのあがらぬ中年」「貧乏神」「化け物」と切って棄てる、有吉的毒舌。的確すぎる一言人物評。周瑜、グッジョブです。

 あまりホメ言葉的感想になってないけど、これだけ色々言えるのは、十分楽しんだ証拠なの〜。

人気blogランキングへ
ラベル:三国志
posted by sweet_pea at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月17日

アルカロイド・ラヴァーズ : 星野智幸

「アルカロイド・ラヴァーズ」 星野智幸

 これは、暗黒「ボタニカル・ライフ」か? いや、暗黒と呼ぶにはあまりに濃い極彩色のイメージ・・・、悪魔的「ボタニカル・ライフ」と言うべきか。

 いとうせいこう好きなため、つい引き合いに出てしまって申し訳ないが、“ベランダー”いとうせいこうが、植物を育て、植物と生活を共にすることで感じているらしい「植物的生命サイクル」「植物的時間の流れ方」の感覚が、この小説を読むにあたってとても助けになった。

 種から芽吹き、成長し、葉を茂らせ、花をつけて実を成す 〜 常に変化をする植物の生。季節が巡り、葉を落として沈黙する植物の死。その死の中に準備される次の生 〜 植物の再生。


 かつて、誕生〜変化〜死〜再生を繰り返す植物としての生の中で生きてきた記憶と感覚を持つ咲子。その生と死の中には、同じく植物の生を生きるものたちとの激しく奔放な恋があった。

 何度も生き、何度も恋をし、何度も死に、生まれ変わる 〜 ランプの花が咲き、ステンドグラスの草の茂り、嬰児が実る楽園 〜 かつてそこが私の場所だった。

 循環する「植物の生」を生きる楽園を追われ、一度しかない生から死へと一方向に時間の流れる「人間の生」へと落とされた咲子。罰としての「人間の生」を生きながら、ひりつくように楽園を夢想する咲子。

 自分は「バチがあたっている」という男・陽一と結婚した咲子は、夫に植物の毒を盛り続ける。妻の盛る毒を飲み続ける陽一。二人を1本のベンジャミンの木が見つづけている。

 二人の男女と一本の木は何処を目指したのか。罰を受けながら、楽園に立つ「骸骨の木」になろうとして失敗しつづけた咲子。「人間の生」の呪縛から咲子は逃れることができたのか。

 楽園に生き直すことを強く強く渇望する、楽園を追われた「人」の記。



人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月23日

斎王夢語 : 萩尾望都

「斎王夢語」 萩尾望都

 万葉の歌とともに紡がれる斎宮の物語。

 アマテラス(ここでは荒ぶる男神として描かれている)を祀り鎮めるため、伊勢へ斎宮として赴いた皇女たち。倭姫〜稚足姫〜大伯皇女〜井上内親王〜。

 伊勢の地で、優しく美しい姫との穏やかな日々に、アマテラスの魂は鎮まり平安を得る。自らの孤独を慰める斎姫たちをいつしか愛しくも思う神であるが・・・。

 神の花嫁として捧げられた身でありながら、人の世の流れ、人との交わりに心を乱す 〜 若者との恋に戸惑い、濃い情愛に苦しみ、人の世の悲劇にのまれる姫君たち。

 姫の乱れる心に、アマテラスは再び荒御魂(あらみたま)と化す。悲しみ、狂う姫の心に、我を忘れて荒ぶる神。

 神のそばにある斎宮とは言いながら、いつかは人の世の理の中に帰っていってしまう人間である姫。いかに暴君である神といえども、その理を変えることはできない虚しさ。留めることの出来ない人の心、人の運命・・・神は荒れ、すさび、哀しむ。

 神と人の間で生きた斎宮の哀しい物語であると同時に、アマテラスの孤独な愛の物語であるようにも思える。

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 00:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月11日

バチカン奇跡調査官 : 藤木稟

「バチカン奇跡調査官」 藤木稟

 セントロザリオ修道院で起きた奇跡〜処女懐胎〜調査のため、バチカンより、上層部の意図を受け派遣された二人の奇跡調査官〜科学調査官の平賀・ヨゼフ・庚神父と古文書解読の専門家ロベルト・ニコラス神父。

 二人の眼前で起きる更なる奇跡。セントロザリオ学院の生徒の体に現れる聖痕現象。カソリック聖者の殉教に見立てた凄惨な連続殺人。セントロザリオで何が起こっているのか? これは天使と悪魔の戦いなのか?


 美貌(『象牙色に輝く肌、黒く真っ直ぐな髪、アーモンド形の大きな瞳を覆う長い睫、細く高い鼻筋に意外にセクシーで肉感的な唇』という超絶な外見だ!)で、天才で、ちょっと変人な奇跡調査官。処女懐胎、涙を流すマリア像、壁に浮き上がる聖母子像などの奇跡。教会の納屋での背徳的な行い。学院の生徒たちに受け継がれる謎の文字を刻んだ占い板。『ホワイトプリンス』『ブラックプリンス』などと呼ばれるむやみに美形な学生たち。

 やたらと繰り出される喰い付きのいいネタをうほうほと拾い食いしながら読み進めていったのだが・・・何だ? この不完全燃焼感。

 景気良く謎のピースをばら撒いてみたけど、ばら撒きすぎて一つ一つ有効な伏線として活用しきれなかったって感じか・・・。

 一つ一つの謎は一応謎解きされているけど・・・。やっぱりどうも・・・それぞれの謎の、本筋のストーリーへの回収が上手くいっていない。謎解きが強引すぎたり(学院の生徒に現れる聖痕現象の件り)、「果たしてそのネタ是非とも必要だった?」って疑問に思えるものがあったり、エピソードが中途半端だったり(学院の警備員・ジェームズがらみのあれこれとか・・・)で、バラバラであったピースを回収しながらダイナミックに収束していって欲しかったストーリーの求心力が削がれてしまってる気がする。


 そもそもこの話、『奇跡調査官コンビの大活躍!』? 『奇跡を扱うミステリもの』? 『宗教界を舞台にした推理ドラマ』? 『科学と信仰の間で葛藤する心理・真理ドラマ』? どこに力点が置かれているんだろう?

 調査官の活躍は意外と地味だし安易だし、奇跡の正体の内いくつかは、調査官が解明するのを待つまでも無く、おおかたの見当はついてしまうし、奇跡の後ろに蠢く事件の真相にしても、着想こそ面白いものの、ストーリーとしては説得力不足というか、伏線がうまく機能していないというか・・・残念・・・な感じになっているし・・・。

 後は、見目良いキャラクターたちに『萌っ♪』と萌すのを期待するしかないのだが・・・それも私としては不発。(これは完全に個人的好みの問題だけど)

 
 こうなると、もう揚げ足取りになってくるんだけど・・・

ゴシックな雰囲気を出すためか装飾的な言い回し使ってくる一方で「意味深」なんて軽い表現使ったりするから何かバランス悪い・・・とか

『ロベルトはさっそく解読表をアルファベットに直すという細かい作業を始める準備にとりかかった。』・・・ってアナタ、暗号の解読表はもう出来上がってるんだから。解読表をアルファベットに直すんじゃなくて、解読表を使って暗号文をアルファベットに直すんじゃないの?・・・とか


 な〜んか、読後に消化しきれないヘンな感じが残っちゃったなぁ〜。

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月11日

雪沼とその周辺 : 堀江敏幸

「雪沼とその周辺」 堀江敏幸

 冬には上質の雪が降り、その雪を愛するスキーヤーが訪れる他には、ひっそりと閉ざされた雪沼とその周辺。

 元々この土地に暮らしていた者、どこからか流れついてここに暮らす者・・・それぞれが静かにそれぞれの生活を営む。雪沼の土地と、人とゆるやかに結びつきながら。

 低く静かに語られる、それぞれの喜怒哀楽、胸に抱いた記憶と想い。近すぎも遠すぎもしない場所から、雪沼の人々の生活を見つめる視線は、深い傷、願い、悔恨、諦め、希望を秘めて穏やかにすぎる彼らの日々を、不思議な距離を保ちながらさらさらと語る。

 雪沼には、自分の心の中を見つめながらゆったりと暮らせる静けさがある。まだ、街の喧騒にまぎれていたいと思う私には、こんなふうに人の想いが濃く漂っている町に暮らすことは、少し怖ろしくも思われる。

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 23:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月06日

能は生きている : 林望

「能は生きている」 林望

 先日、中山可穂の「弱法師」を読んだ時に、モチーフになってる能の演目について予備知識を仕入れといた方がいいだろうと思って、図書館で謡曲の本をざっとながめてきたんです。

 中山可穂さんの小説については、『盲目の美少年と父の愛』『百夜通い』『二人の人からの愛に苦しむ女性』といった能の演目の中の一部の設定・場面がモチーフとして織り込まれてはいるけれども、世界観自体を能と共有するものでは無いように思いましたが、今回、注釈つきでちょびっと謡曲を“読んで”みて(実際に謡うとどうなるのか見当もつかない;;)、いつか能も見てみたいなぁ・・・と。歌舞伎よりもずっと小さな舞台の上で、あの劇的な空間の変化はどのように起こるのかなぁ・・・なんて気になります。

 で、とっかかりに手にとったのが、ちょうどブックオフで見かけたリンボウ先生の「能は生きている」です。

 ほんのりと興味は湧いたものの、私にとっては同じ次元に存在するものとは到底思えない能。林先生も、解説として本書の巻末に談話が掲載されている野村萬斉氏も「能は見るものに『常識』が必要とされる芸能だから、何も知らない状態でいきなり能を観るのはおすすめしない・・・」というご意見のようです。・・・むぅ、それならば能楽堂にたどりつく為にいくらか勉強せねばなりますまい。

 本書は能の入門書には違いないのでしょうが、親切に手取り足取りと言うよりは、“とりあえず、この辺りから攻めてごらんなさい”と、とっかかりのある方向を示してくれて、後は各自頑張りなさいというスタンスのようです。ただ、スパルタ式につきはなすのではなくて、『小町の「醜さ」について考える』『業平の「美男」について考える』『六条御息所の「苦しみ」について考える』・・・他、初心者でも喰い付きやすいトピックを立ててくれています。舞台写真を多数配して、生徒の鼻面にニンジンをぶら下げることも忘れません。

 初心者にとっては舞台写真は喰い付きやすいエサです。舞台写真の中で、いくつかの面は生きているものとしか見えない表情を浮かべていてドキリとします。

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 22:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月04日

殿さまの日 : 星新一

「殿さまの日」 星新一

 昨年12月に、忠臣蔵がらみで書いたこちらのエントリへのコメントで、おおくぼさんより紹介していただいた「ああ吉良家の中心」が収録された、星新一氏の時代小説集です。

 江戸・・・封建制度、幕藩体制という万全のシステムで支えられた「天下泰平」の世の中。全体的に見れば、日本の歴史上かつてなく長い平和な時間 − 世は全て事もなし。でも、その「平和維持システム」につながっている善男善女に視線をあててみると、胸には燃やしきれない、小さな小さな何かを抱えて・・・。

 「お家安泰」の使命を背負い、「先代」から「世継」への中継役としてしか生きられない田舎の殿さまの、淡々とした独白が切ない「殿さまの日」

 名君だった吉良のご隠居様が赤穂の浪人たちに殺された! 仇討ちに盛り上がる江戸の人々に、煮え切らない幕府の態度。こんな世の中は理屈に合わぬ!と町人上がりの吉良の忠臣・良吉がひと暴れ・・・「ああ吉良家の忠臣」

 地味に真面目に下級の藩医の仕事を務めた。出世のため、薬草を悪用した詐欺まがいの手口を使うなど、欲深で汚い面も持ちつつも、優れたバランス感覚で、医者としての仕事にもそこそこの成果を残し、民衆から愛されたその息子。長崎で西洋医学を学び、理想に燃えながらも、そのゆるぎない信念ゆえに藩の人々とぎくしゃくし、ついには小さな失敗で人々の信用も禄も失ってしまったそのまた息子。・・・「藩医三代記」

 ・・・ 

 システムにうまく乗っかる人。システムにはまり過ぎちゃう人。システムからはじき出される人。システムのひずみに落ち込んでしまった人。それぞれに、どこかすきま風が吹いていくような心の中で浮かべる、泣き笑いの表情が見えるような12編。

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 23:13| Comment(2) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月18日

南総里見八犬伝(お子様向け)読了

「南総里見八犬伝」 浜たかや編著/山本タカト画/滝沢馬琴原作

 不思議な縁で結ばれる戦士たちが、運命に導かれるように集まり、妖魔の呪いを絶つ!

 少年漫画などで繰り返し使われる図式。原作発表当時の読者たちは、まさに週刊マンガ誌の発売を待つ気持ちで話の続きを楽しみにしたんじゃないでしょうか?


 戌年の年内に読み終わるために子供向けに編集されたものを選びました。語り口も中々良く、序盤の因縁話、また派手派手しく様々の出会いや事件が次々に起こる前半は“子供向けとは言え、これはなかなか!”と面白く読んだのですが、後半は少し尻すぼみか・・・。長いすれ違いの後にやっと八犬士が揃う場面はもっと大げさに盛り上がって欲しかったし、最後の合戦などはいささかあっさりしすぎ。しかし、原作にしても「後半は退屈」という評判があるくらいだから、これは編著者の責任ではないのかも。

 原作を1/6程度に縮めたという本作、「ダイジェスト版」という感じは否めず、全体的に物足りなさ、つながりの悪さを感じないでもないけど、原作に挑む前の予備知識として読むにはちょうど良かった。本作では長さの都合上、原作のストーリーを変えている所もあるようなので、次は決死の覚悟で原作・・・あの大長編に挑むつもりです。(もちろん現代語訳ですが;;)

 しかし本作でさえ人間関係や過去の因縁の確認のために何度も前を読み返さざるを得なかったのに、登場人物数百人という原作を無事読み通すことができるのか?


 それにしても・・・それぞれに力もあり、容姿にも恵まれた因縁も深き八人の犬士・・・なんてことになると・・・ついよからぬを考えてしまう。BLの洗礼を受けたものとしてはいたしかたないとはいいながら、我ながら苦笑い。






人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月20日

しゃばけ : 畠中恵

「しゃばけ」 畠中恵

 廻船問屋長崎屋の一粒種、薬種問屋をまかされる若だんな一太郎はめっぽう体が弱く寝込んでばかり。店を仕切る有能な手代であり、一太郎の身の回りの世話係兼お目付け役でもある佐助と仁吉の正体は妖の犬神に白沢。

 無断外出した夜道で一太郎が襲われたのを皮切りに、薬種問屋の主人ばかりが襲われ殺される不可解な事件が続き、一太郎と妖たちが事件解決に乗り出す。

 江戸が舞台になっているけど、これは江戸時代の江戸の町というより、一つのファンタジーの舞台と思った方が良いだろうな。妖怪を従えた一太郎坊ちゃんの冒険と成長の物語です。

 屏風のぞき、鈴彦姫、獺、鳴家・・・一太郎のまわりにわらわらと湧き出し、場面を飾る妖たちは、愛嬌があるし、見てくれも華やかでいいですね。犬神の佐助は長身の力持ち、白沢の仁吉はたいそうな色男、その上、妖の格としてはかなり上の方らしい二人に煩いくらいにかしづかれる一太郎・・・ちょっとうらやましい。

 佐助、白沢が時々妖の本性を現す時、黒目が猫の瞳のようにすぅ〜っと縦に細くなる。このシーン好き。ビジュアル的に見てみたい。だれかドラマにしてくれ。

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 21:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月25日

11人いる! : 萩尾望都

「11人いる!」 萩尾望都

 懐かしい作品・・・読んだのは中学生の頃か高校生の頃だったか。何かを暗示するような印象的なタイトル!いったいどんな仕掛けがされているのかと思っていると、内容は非常にオーソドックスなSF。

「11人いる!」・・・宇宙大学入学の最終テストとして、漂流する宇宙船での53日間のサバイバルを課せられた受験生10名+1名。予期せぬトラブル、疑心暗鬼、メンバー内での確執を乗り越え友情を深めるメンバー達。テストを終えた彼らはそれぞれの未来へと・・・。

「続・11人いる! 東の地平 西の永遠」・・・先の宇宙船でのテストを共にしたメンバー達のその後。宇宙大学へ進んだタダ、フロル達9名と、自分の星であるアリトスカ・レで王位についているパセスカ。アリトスカ・レの政変から隣の星アリトスカ・ラとの戦争へと到る中、かつての仲間たちは・・・。

 見果てぬ宇宙に馳せる夢、遠い遠い星の上でも過去から連綿と続く人・生物の営み。作品の世界が性善説で満たされているのもいい。“夢見る惑星・懐かしい未来”なんて言葉がぴったりくる。

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月25日

声の網 : 星新一

「声の網」 星新一著

 この小説を読んだ人の大半が口にするのではないか、という言葉をやはり言ってしまう。

 「この小説が30年以上も前に書かれていたなんて!」

 ちょっとした調べもの、銀行の振込、ショッピングの決済、健康診断やちょとした診療、忘れたくないデータの保管まで、すべて電話一本でできてしまうよう生活の隅々にまで張巡らされ、膨大な個人情報を蓄積した通信網。その網を通じてある日受話器から届けられる“声”。

 ある時はこれから起こる犯罪を予言し、ある時は誰も知らないはずの秘密を語り、またある時は死んだはずの人の声が受話器の中で蘇り・・・。

 12の章で構成されたこの小説、1つ読む毎に1枚ずつベールが剥がされ、それぞれの話がリンクし全体像が見えてくる・・・。

 今の世に人が本当に望んでいるものは・・・。

 この小説が描く世界は私たちに嫌悪や恐怖を抱かせるもの・・・だと思う。反面、非常に良くコントロールされた生きやすい世界であるようにも思える。上辺だけかもしれないけど安定した、まがりなりにも人が共存できている世界。

 この小説の中で起こる多くのことが現在の状況と合致する。

 自分と一本の線でつながった世界から幅広い便利さを享受しながら、その実、線の先の世界を詳しく知ってはいないということとか、“沢山の情報の集積”と“人格”との見分けがつかなくなるということとか・・・。でも現実に人が行き着く世界は、この小説の中の世界とは(当たり前かもしれないけれど)違う気がする。きっともっと悪いことになってる。そんな均等に均された世界でうまく暮らすには人は雑多だし野蛮すぎる・・・ように思う。



人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月03日

川の深さは : 福井晴敏

「川の深さは」 福井晴敏  

 前半は社会派サスペンス、後半はエンターテインメント要素たっぷりのアクションといった感じ。

 この小説を読んで、工作員・保の生き方の鮮烈さが凄い!と思ったとか、その保の生き方に感じて行動を共にする警官くずれの桃山の男気が格好いい!とか、日本の社会に潜む闇について思いをめぐらせてみた・・・とかそういうことはなかったのですが、作中で触れられる“宗教団体・神泉教団(オウムをモデルにしていると思われる)にとりこまれる若者たちの心理”にはふむと思いました。

 特化した共通言語によって成り立つコミューン内部にいることは、共有できる言葉を探りながら居場所を作っていかなくてはいけない一般社会にいるよりも、随分居心地はいいものだろうなぁ。

 超人的な知力、体力、運動・戦闘能力を見せる保や、相手を屈服させる暴力を持ったその筋の人たちの様を見ていると、力のないものはなるべくそういう人達の目につかないようにひっそりしているしかないのか・・・とくら〜い気持ちになります。

 保が「市ヶ谷」に攻撃をしかける終盤部分はさながら映画を見ているようでした。コンピュータウィルスによりパニックに陥る司令室。爆発の炎を眼下に浮かび上がる攻撃ヘリ。文字を読んでいるというより映像を見ている感じ。 これ1作ではまだ読み足りない気がするので他の福井作品も読んでみるつもりです。

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月29日

百億の昼と千億の夜 : 萩尾望都・光瀬龍

「百億の昼と千億の夜」 萩尾望都 作/光瀬龍 原作 

 この作品とはちょっと変わった出会い方をしていて・・・

 兄の学校の体育祭を見に行った時のこと。その学校では各チームの応援団が5メートル四方はあるかと思われる大きなパネルを掲げるのが伝統になっていて、そのパネルの一枚にこの作品の登場人物である阿修羅王の絵が描かれていました。憤怒の相を見せる阿修羅王がとてもかっこ良く、またそれが女性であることを知ってさらに魅力倍増だったのですが、その時はこの作品のことはおろか、萩尾望都という漫画家のことすら知らなかったのです。

 その後「阿修羅王が出ている漫画」のことが気にかかって探したのだろうということは想像できるのですが、実際どういうきっかけでこの作品に行き当たったのかは残念ながら覚えていないんですよね。

 長い長い時間の中で続く「滅び〜無に至る宇宙」と阿修羅王たちの戦い。
 
 久しぶりに読んで思うのですが、あらかじめ破滅へむかう因子を宇宙に組み込んだ“シ”だとか、それも含めてすべてを「見続ける」ことしかできない“転輪王”は、私の「神様観」に影響を与えたのかもしれないなぁ。

 最初にコミックを読んだ後、光瀬龍氏の小説にも挑戦したのですが、こちらは途中で挫折しました。ムズカシカッタ・・・

人気blogランキングへ
posted by sweet_pea at 22:34| Comment(2) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年03月16日

こんな本で勉強しなくても・・・

「頭がいい人、悪い人の話し方」
樋口 裕一著 発行:PHP研究所 ISBN4-569-63545-8

 母がふらっと遊びにきて、私の部屋に「頭がいい人、悪い人の話し方」を忘れて帰って行きました。ベストセラーらしいのでパラパラと見てみましたが(読んではいない)、どうもこの著者の言い回しは癇に障る。“頭がいい人”の書いた文章なのかなぁ?これが。あくまでも文章を拾い見ただけの個人的感想ですが・・・。それともこれを読んで不快になっているようでは「自覚が足りない人」だということでしょうか、私。

 この本は魅力的な人間性の形成を助けるより、人を卑屈にさせる効果の方が大きいように感じましたよ〜。現に私の母はかなりへこんでいたようですし。それも、私の母が人間的に欠点だらけだから?
posted by sweet_pea at 23:02| Comment(4) | TrackBack(0) | 作者名 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする