2017年10月18日

ないもの、あります : クラフト・エヴィング商會

『ないもの、あります』 クラフト・エヴィング商會

 この商會の出版物を手にするのはこれで4度目。初めて目にしたときのように純粋な夢見心地にはなれないかもしれないけれど・・・、「ないものが、ある」世界に心地よく遊ぶひとときを求めて手に取った。

 「堪忍袋の緒」「口車」「助け舟」「転ばぬ先の杖」「おかんむり」・・・目録に並ぶ商品名はさほど意外なものではなかったのだけど、その商品の使用法やスペックは私の予想からは少しずつずれたものであって・・・。あまりに日常的な私の予想を軽やかに外してくる語り口、「ないもの」をほんのひととき「あるもの」にしてしまう言葉の豊かさが心地よい。

 私の一番のお気に入りは『鬼に金棒』。『鬼に金棒』を手に入れると、「矢でも鉄砲でも持って来いっ」って心持ちになるのかぁ・・・。「矢でも鉄砲でも」・・・、「矢でも鉄砲でも」・・・「矢でも鉄砲でも持って来いっ!」・・・ふふふ、言ってみたい。




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2016年07月09日

すぐそこの遠い場所 : クラフト:エヴィング商會

『すぐそこの遠い場所』 クラフト・エヴィング商會

 あぁふ・・・心地良い時間を過ごした・・・。

 様々な種類の「白い紙」だけを販売する紙肆。永遠の夕方のような街の「本物の夕方」にだけ走る小さい列車と果てしなく長いプラットホーム。内部にみっしりと宇宙を充たした劇場。筆談のみで過ごす長い長い夜に食す幾皿ものオードヴル。夜光虫のように光る楽譜を手に森と荒野をさまよいながら世界を司る音楽をかなでる<かなでるものたち>。

 そんなものたちのことをとりとめもなく記したこの不思議な事典を開いている間、「私」という意識は消えて、AZOTH(アゾット)なる架空の世界で書かれた架空の事典を読む「架空の人」となって時をすごしていたようだ。

 つまりは私もこの事典に記されているような、AZOTHを訪れる「過客」になれたということだ。





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2014年08月29日

じつは、わたくしこういうものです : クラフト・エヴィング商會

『じつは、わたくしこういうものです』  クラフト・エヴィング商會

 「月光の密売」「極小音楽の作曲」「大切な時間の保管」「「ひらめきランプの交換」「大変ことになってしまったワインのコルク栓のレスキュー」・・・等々、不思議な仕事を生業とする人たち。それぞれの仕事道具を手にした姿や独特なアイテムの写真とともに、仕事との出会い、こだわり、仕事上のちょっとしたコツなど、仕事師たちへのインタビューを収めた架空のお仕事図鑑。

 多分この世のものではない仕事が存在する世界にうっとりと酔いたいと思うけれども、「不思議な仕事たち」の幻想性と、その仕事師としてポートレートにおさまっている人たちの「現実にちゃんとしている社会人」的存在感が何だかそぐわない気がして、上手くハマれない。むしろ、巻末に収録された「じつは、わたくしほんとうはこういうものです」〜この本でモデルをつとめた人たちの本当のプロフィールをそれぞれの方の顔写真と見比べながら読む方が味わい深かったり・・・。

 そんな中で、冷たい水をたたえた塔の守り人「冷水塔守」は、その仕事を「任務」と呼ぶ女性仕事師の佇まいと、水の塔を守るという仕事の異次元っぽさが妙にマッチしてその不思議な感じが心地よかったのだが、「冷水塔守」星加見子に扮しているのは小説家の小川洋子さんだった(「じつは、わたくしほんとうはこういうものです」を読んで気づいた)。

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 一読したときにはちょっとギクシャクして充分にこの世界を楽しめなかったんだけど、一度巻末のタネ明かしまで読んで再度読み返すと、もう少し柔らかに「ああ、いいな」と感じられるところが増えた。「白シャツ工房」の仕立て屋さんにはいつかお会いできるといいなと思う。



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2014年05月14日

どこかにいってしまったものたち : クラフト・エヴィング商會

『どこかにいってしまったものたち』 クラフト・エヴィング商會

 「硝子蝙蝠」「記憶粉」と、『探偵青猫』に登場するアイテムがいきなり二つ続いたものだから、……ちょっと興奮した。『青猫』では、「硝子蝙蝠」はここに記されているような不思議機械ではなく、美を愛する怪盗の通り名になっているのだけど。

 『探偵青猫』を描いた本仁氏も、このクラフト・エヴィング商會の不在品目録を見てたまらない気持ちになったんだろうか? 実在したのかどうかもわからない品々。ただ、残された断片からそのものを思うだけで何かうっとりとした、たまらない気持ちになる。思えば、孤島の城に住む怪盗、純情で惚れっぽい刑事、粋な女衒、異才の少年贋作師に、優雅でスマートな貴族探偵が大活躍する『青猫』の物語も「どこかにいってしまったものたち」の一つなのか・・・。

 月光をあつめて撃ち出す光線銃。グラスに流星を溶かして味わうシロップソーダ。水蜜桃の食べごろを調査する猿型機械。「あるひとつの夜を忠実に記録し再生する」機械の終わらない解説書。明治、大正、昭和と「不思議な品」を扱ってきたクラフト・エヴィング商會の引き出しに、記録とその断片だけを残して今はもう無い、どこかにいってしまったものたち。見知らぬはずなのに懐かしく胸をしめつける品々。




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